ヴァルキス筆頭と長女６ ページ11
「！」
その時、注文カウンターで受け取った魔法呼び出しベルが鳴った。
ドミナはとりあえず席を立ち、手に呼び出しベルを握りしめながらカウンターへ歩いていく。
Aに抱いた違和感のことで頭がいっぱいになりながらも、店員にベルを渡して注文したアップルパイを受け取った。
そして席に戻ろうと後ろを振り返ると、いつの間にかAが立っていた。
「っあ、え…？」
ドミナはまさか自分についてきていたと思っておらず、間抜けに驚いた。
心臓がバクバクと音を立てているが、キョトンとしたAの様子を見て徐々に落ち着いていく。
「…A、ついてきてたんだね
気づかなかったよ」
先程までの自分を誤魔化すように笑いながらドミナは言うが、Aはドミナの異変に気づいていた。
しかし、隠そうとするのなら詮索はしない。
「そうなの？えへへ、やたー！」
いつもの愛らしい笑顔を見せて、Aは早く席に戻ろうとドミナを促した。
そんな様子を見て、先程までの違和感が嘘なんじゃないかとすら思え、ドミナは考える。
Aが何者だったとしても、AはAである。この世で一番自分を愛してくれる、この世で一番自分が愛している人間だ。
きっとこの違和感の正体をAに聞けば、包み隠さず答えてくれるだろう。
でもそれは、彼女が話そうと思ったときに聞きたい。その話がどのようなものであれ、きっと受け入れられる。
Aはただ話さないだけで、嘘をついたことはほとんどないのだ。
今までの自分への愛は、絶対嘘じゃない。
ドミナは先を行くAの後ろ姿を見つめていた。
自分より小さくて、華奢で、いつもと変わらないその姿に安心しながら。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そらいろ | 作成日時：2024年3月13日 19時
