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1ヶ月ぶりに会った増田さんは、黒かった髪をまた少し明るい色に戻していた。
いつも通りのゆるゆるしたお洋服。


おばあちゃんのおうちにお邪魔して夕ごはんを作る約束だったから、鍋の具材になるようなものをたくさん持って玄関先に立つ私を、増田さんはぐふ、ってお顔で見て笑った。



いつ来てもきちんと整理整頓されてる。今日はいつにも増してこざっぱりとしていた。
なんだか心なしか物が減ったような。
お部屋の中のグリーンも減っているような。


キッチンには、いつも通りまっしろで清潔そうなふきんが何枚かかかってる。


「鶏つくね鍋にしようかと思って」って言ったら、増田さんは可愛らしい拍手をしながらにこーってした。可愛いな。



わーきゃーしながら楽しく作って、大きな土鍋を居間に運んだ。増田さんが、カセットコンロは出すのもお手入れしてからしまうのもめんどくさいとか言って、カラフルな毛糸で編んである鍋敷きを出してきてくれた。


冷めないうちに食べよう、って大した会話もせず黙々と食べて、麦茶を飲んで一息ついた増田さんが言いにくそうにぽつりと言った。




「この家、来週引き払うんだ」




あまりに唐突で、私はうまく相槌もうてずにぼんやりしてしまった。


増田さんはもうひとくち麦茶を飲んで、唇をぺろってなめた。
前髪を指でぱさって直したあと、ぽつりぽつり話してくれる。



入院していたおばあちゃんはとりあえずの退院をして、すぐにサービス付きの高齢者住宅に入ったんだそうだ。
介護認定を取れるまでに時間がかかるから、お金をたくさん出したら入れる所に、あっさり決まったみたいだった。


それについて、驚いたことに現場での手続きのいろいろは増田さんがひとりでコツコツやっていたようだった。ご両親も書類関係で必要なことを滞りなくやってくれたみたいだけど、こちらにはほぼ顔を出さなかったそうで。




「……この家は……」
「この家はねぇ、裏にちいさい自動車整備工場あるでしょ?」
「うん」
「そこの人がそっくりこのまま買い取りたいって言ってくれて、壊さないで住んでくれるみたいで」
「……うん」
「庭にいっぱい花とか植わってるやつをさ、価値をわかってくれる人っていうか、綺麗だからもったいないよね、って言ってくれて、そこも心配なさそう」
「……」
「中の物も、大きい家具とかは差し支えなければ置いてって、って言ってくれてて、俺ひとりで片付けてたんだけど……」

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設定タグ:NEWS , 増田貴久 , じぇにー   
作品ジャンル:恋愛
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あやぽにょ - 更新ありがとうございますm(_ _)mいつも幸せなります!!夢で増田さんに会いたいです、。。 (2018年10月29日 21時) (レス) id: 1cc16aeb13 (このIDを非表示/違反報告)
どみ - 最高に好みのお話です!そして読みやすいです!ありがとうございます! (2018年8月16日 22時) (レス) id: a1e09fad41 (このIDを非表示/違反報告)
ひろ(プロフ) - 追い付きました。はぁ、キュンキュンします。私も生きていられますでしょうか?こちらこそ、ステキなお話ありがとうございます。続きを楽しみにしています。 (2018年7月11日 17時) (レス) id: d177f1dbfb (このIDを非表示/違反報告)
そらまめ(プロフ) - 毎回読むたびに全力で☆を押したくなる…押して「既に投票済みです」と拒否られてしまうのを繰り返してます笑ほんとうにステキな作品ですね。 (2018年7月9日 8時) (レス) id: 5b21419bc4 (このIDを非表示/違反報告)
あやか - 素敵です(´;Д;`)!!!だきしめられたい...まっすー(´;Д;`) (2018年7月9日 6時) (レス) id: 1cc16aeb13 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:◯じぇにー◯ | 作成日時:2018年2月18日 21時

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