傘になりたい（11.11HBD！DearYT）

side YT ６ ページ43

もういてもたってもいられなくて、部屋を飛び出す。
今すぐ会って、とりあえず抱きしめてあげたい。



もうすぐ日付が変わる時間。
酔っぱらったサラリーマンとか、女子会してましたみたいなＯＬさんとかとすれ違う。
終電前だからか、すぐタクシーが捕まった。
Aちゃんち周辺の住所を告げて、外を眺める。


信号待ちがもどかしい。
早く。
早く会いたいよ。

同じ気持ちでいてくれてるって勝手に思ってたんだよ。
ちゃんとしたことを何も言ってなかったことにもうっかり気づかないくらい、自然にここまで来たから。
なんて、言い訳だけど。
大好きなんだよ？


窓の外をキラキラした明かりが流れていく。



タクシーを降りて、マンションの外からAちゃんの部屋を見る。
あ、いま明かりがついた。
いる！

急いでエントランスに入ってエレベーターの
ボタンを押す。
セキュリティは部屋の前だけ。
これ女の子の一人暮らしで危なくない？って前回来た時も思ったんだよね。


部屋のインターホンを鳴らす。
うわ、ドキドキする。

どんな顔してドア開けてくれる？
ドキドキしながら待つ。


……


…………出ないし。

いや、でもいるのは知ってんのよ。しかも寝てないでしょ？さっき明かりついたもん。
居留守使ってんなよ、ってイラッ。



ドアをドンドンノックしてみる。
反応が全然返ってこない。
続けてドンドン。
ドア開くまでやめないよ？
早く開けないと近所迷惑よ？


「Aちゃーん！開けてー！」
「……ちょっと……祐くん？」
「あ！やっぱりいた！開けてー！」
「……ごめん、ちょっと今無理で」
「なんで〜？大丈夫だから〜！鍵ちょっと開けてくれればいいから〜！」


何が無理なの？
早く開けてよ寒いし！
開くまでドンドンと大声やめないよ！


「開けてー！早く！」
「……ちょっと今お客さん来てて」
「ダレ？挨拶するから開けて」
「……実は彼氏が！来てて！だから！帰って……」



……は？

彼氏ってなに？
思わず手が止まる。


俺と同時進行で彼氏がいただと？
はあ？？
気づいたらドアをものすごい勢いで蹴ってた。

「……彼氏に挨拶したいから開けて」
「……」
「開けてよ」



声も気配もしなくなっちゃった。
あ、でも彼氏が今本当に部屋にいたら、ドアをドンドンした時点で出てくるよね？
あれ？嘘じゃない？
ってちょっと冷静になる。

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