外恋慕【 sh × sm 】 (ページ32)

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ついに引越しの日がやって来た。
慎太郎も手伝ってくれて１３時手前で全て運び終わった。最後の軽量の荷物を慎太郎の車の後部座席に乗せていたら聞き覚えのある陽気な声が耳に届いた。

「あ！この前の！」

慎太郎と共にパッと振り返ると、紫耀の事務所にいたスーツの男の子が目を見開いて立っていた。慌てて顔を背けると慎太郎が話しかける。え、なに、慎太郎のことも知っているの……？私だってついこの前会ったばかりだったから気が動転してる。

慎「……あ、紫耀の事務所の……、」
マ「そうです！え、家隣なんですか？！」
慎「あ、彼女が隣の家です」
マ「あ、彼女さん……？えっ、あれ？」
慎「僕の彼女です」
　「どうも……」
マ「あ！そうだったんですね！……なんだ僕、勘違いしてました」
慎「勘違い？」
マ「てっきり紫耀さんの、」

「海人！」

何も言わないで！と願った直後、紫耀が玄関から出てきた。危機一髪。助かった。……なんて、疚しいことがあるわけでもないのに、どうして私はこんなに最低な女なんだろう。いつの間にか手に力が入っていて、慎太郎は何も言わずにその手を握った。見つめる先は紫耀。

マ「紫耀さん！起きてたんですか？電話出てくださいよ！」
紫「来んの遅えんだよ」
マ「道混んでて！すいません！」
紫「……あ、マネージャーの髙橋海人」
マ「です！よろしくお願いします！」

なるほど。マネージャーだったんだ。
確実に私のこと覚えてるよね。

慎「……あ、マネージャーだったんだ、この前はありがとうございました」
マ「いえいえ…！彼女さんもこの前、」
紫「おいもう行くぞ」
マ「あ、やばい！乗ってください！じゃあ失礼します！」
　「……………」
紫「じゃーね」
慎「行ってらっしゃい」

この数分間、生きてる心地がしていなかった。２人を乗せた車が走り去った後、やっと呼吸が出来た。慎太郎に握られてる手がどんどん熱くなる。冷や汗が止まらない。どうして紫耀は私を庇ったの……？

慎「マネージャー若いよね」
　「……え、？」
慎「海人くん」
　「あぁ、……うん、そうだね」
慎「会ったことあるの？」
　「え、」
慎「……ううん、行こっか」

やっと解放された手のひら、そのまま運転席に乗った慎太郎を追いかけて助手席に乗り込んだ。新たに始まる２人の新生活が幕を開けた。

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