外恋慕【 sh × sm 】 (ページ17)

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　「紫耀！」
紫「……いいって言っただろ」
　「慎太郎の家、こっちじゃないの」
紫「え？」
　「……一人暮らししてるの、」
紫「……どっち」
　「……あっち、」

たったの１０分だけど、１時間に感じた。
スーツの上着とカバンを受け取って慎太郎の家を案内した。
合鍵を使ってドアを開けると一瞬止まった紫耀の動き。

　「ん？」
紫「……同棲してんの？」
　「ううん、まだしてない」
紫「そっか、」

一々そんな顔しないで。
付き合ってるんだから合鍵を持つのは普通でしょ。
自分だって女の子と遊んでたくせに。
隠したって無駄だってば。

　「ありがとう」
紫「ううん、」
　「あとは私がやっとくから」
紫「うん、」

慎太郎をベッドに寝転がせて、部屋の中を物色し始めた紫耀。
一向に帰ろうとしない。……慎太郎、早く起きてよ。
スヤスヤ寝息を立てて眠る慎太郎に初めて怒りを覚えた。

紫「結婚間近だったり？」
　「え？」
紫「Aのもんばっかじゃん、」
　「……あぁ、……」

辺り一面を舐め回すように、紫耀は冷たく言い放った。
今更、何をどうしたって、私たちが交わることはない。
期待をするだけ無駄なんだって、とうの昔に思い知った。
慎太郎を見つめながら、今までの時間が鮮明に蘇る。

　「慎太郎は、」
紫「え？」
　「……慎太郎は、私の全てを受け止めてくれた」
紫「…………」
　「紫耀がいなくなってから、ずっとそばにいてくれた」
紫「………A、」
　「だから、受け止めなくちゃいけないの、」

結婚だって、慎太郎が望むなら、……
滲む視界に紫耀の顔も遠のく。
突然目の前に現れて、私の心を掻き乱して、
聞きたいことが何一つ聞けないまま、
無情にも時間だけが過ぎる。
時計の秒針が静かな部屋に響き渡る。

紫「俺が受け止められねえんだよ」
　「……ぇ、」
紫「……情けな、」

こんな現実、私だって受け止められない。
今にも倒れ込みそうなその背中を、私はいつまで追い続けるのだろうか。

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