空想と葉桜【d！】【npl】 (ページ10)

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夕食を食べ終えると、Aはぼんやりとすることしかできなかった。コネシマはキッチンでお皿を洗っている。その音をバックグラウンドにうとうととしてきたAはゆるりと目を閉じようとした。
するとタイミングがいいのか悪いのか、あと数秒で眠りの世界へ旅立つだろうというタイミングで、コネシマが帰ってきた。ベッドが音を立てて沈む。コネシマは寝転がるAの頭を撫でていた。Aはそれを振り払うこともせず、ぽつりと言葉を発した。
「わたし、ここから出ていきたい」
「無理やろうな。お前は俺から逃げられへんよ」
「…………なんで」
「お前みたいな生き物、一人では生きていけへんやろ」
「……わたしに腕と足さえあればなあ」
「俺が切り落としたから無理やな」
ああ言えば、こう言う。コネシマは恐ろしいほど口が回る男だということをAはもう知っていた。自分のひとりごとに対して全て答えを返してくるコネシマがAは鬱陶しくて仕方がなかった。
それでもコネシマが言っていることは事実だった。
「……コネシマさんのこと、殺したいな」
「その手足でどうやんの？」
ごもっともだ。
でも、そんなことでも考えていないと自分の心が近いいつかの日に壊れてしまうということを、Aはなんとなく予感していた。
だからどんなに無駄な夢物語でも彼女は思考することをやめなかった。
「コネシマさん」
「なんや」
「いつかわたしに殺されてね」
「無理やろ」
コネシマは鼻で笑った。