100.マイ・ドリーム・削除未満【shp】 ページ47
そういえば、ショッピ君の名前って、何だっけ。
突然気になったことに頭が支配された。
ショッピ君の本名がわからない。わからない自分が一番わからない。名字も名前も知らない。ただ、ショートピースが好きで、そこからつけられたあだ名が「ショッピ君」で、バイクが好きで、紫色のジャケットとヘルメットがよく似合う、情報だけはある。どこかで知った情報がある。以前から頭に入っていた
彼は誰だろう。ショッピ君だ。この世界にいる人間だ。それで本当にあっているのだろうか。それがこの世界の真実だっけ。彼が私のそばにいる理由って何だっけ。
わたしが、彼に恋愛している理由って、何だっけ。
「ねえ、ショッピ君」
「なんですか、A」
そうやって私の呼ぶけれど、それで本当にあっているのだろうか。私の名前はそれだっけ。それだった気もするし、それじゃなかった気もするし、そのまま呼ばれて、いいんだろうか。
生まれてしまった違和感は、拭えない。
「ショッピ君の名前って、何だっけ」
元々知っていなきゃおかしなことなのに、何故か、私は知らなかった。そして、忘れているとしてもそれは聞くべき大切なことなのに、私は何故か、それを聞くのを躊躇ったし、戸惑った。私は、本当は、こんなことをしちゃいけないような気がしてーーーーーーーー
「俺は『ショッピ』ですよ。それ以上でも、それ以下でもない。」
ショッピ君の声は淡々としていた。淡々。私はどうしてショッピ君の声を“淡々”と表現したのだろうか。ショッピ君。ショッピくん。しょっぴくん。しょっぴ。ショートピース。紫のジャケットがよく似合う。バイクによく乗っている。ショッピくん。ショッピ君。わたしの、最愛。たぶん、最愛の人。そうだ。彼はショッピ君だ。この世界で私を愛してくれている人間だ。私の最愛だ。それだけでいい。この世界に彼がいる理由はそれだけでいい。この恋愛が続いている理由もそれだけでいい。私の夢が続いていく理由もそれだけでいい。そして、たぶん、きっと、私が実在している理由はそれでいい。
ショッピ君は私をきつく抱きしめた。私はそれに応えるように、彼の背中に手を回した。
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