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＊ ページ46
「蘭たん、来たよー」
「……あ、うん」
「ひさしぶり」
「うん、久しぶり」
久しぶりに聴くAの声と、久しぶりに見るAの姿は、紛れもなく本物だった。
そうだ。こんなに簡単だった。
こいつは呼べばおれの傍にきてくれる。それはどれだけ幸福なことだろうか。
桃ジャムなんて、くだらなくて簡単なことでもあいつは来てくれる。
「桃ジャム、どれー？」
楽しそうなAの声を聞くだけで、楽しそうなAの姿を見るだけで、おれが先程まで抱えていた憂鬱の感情は、どこかへ消えてしまった。それこそ、桃ジャムを作っていたときに一緒に煮詰められてしまったように。けれどAはそれに気が付かずに桃ジャムを食べるのだろう。おれがそれを作った理由もその時おれが抱えていた感情も全部知らないまま。それでいいとも思うし、知られてしまえでいいのにとも思う。
でも、まあ、とりあえずは、あいつと一緒に桃ジャムを食べることに専念しようと思う。
桃ジャムってどうすればおいしく食べられるのだろうか。おれはそれを考えながら、Aの隣に行った。
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