空想と葉桜【d！】【npl】 (ページ41)

今日:26 hit、昨日:6 hit、合計:4,650 hit

＊ページ41

次の日、俺は昨日泣きすぎて腫れた目を誰かにつっこまれないか少し心配していたが、それは杞憂となった。なぜなら俺の目とは比べものにならないくらいの傷を抱えたやつがひとりいたからだ。
それが今日俺が朝一番に出会ったショッピだった。
ショッピの左頬には赤紅葉が咲いていた。痛々しい赤色の傷からは、まるで誰かが害を与えようという明確な意思を持ってつけられたということを感じとることができる。
昨日、俺はA先輩とキスしたところまでしか知らない。
一体、俺の知らないところで何があったのだろうか。
「どうしたん、それ？」
俺はどくりと変な音を立てる胸を無視しながら、ショッピに声をかけた。
ショッピは平然とした顔でぽつりと呟いた。
「A先輩にぶん殴られた」
「え、えぇ？」
なんで？というのが俺の純粋な感想だった。
そんな俺の様子が予想通りだったのか、ショッピはやはり特に動じずに俺の疑問に答えてくれた。
「昨日、A先輩にキスしたら、ぶん殴られた」
「な、なんで……？」
「まあ、俺が勝手にしただけやったし」
けろりととんでもない発言をしたショッピが俺は信じられなかった。隠しきれない俺の感情を見抜いたまま、ショッピは淡々と説明した。
「昨日の行為は、俺の完全なる片思いから行われたことやで。A先輩は俺のことを少しも意識してない。でも、それでもええ。A先輩の心に少しでも傷が残せるなら、俺はええ」
「…………。」
「お前は？お前はいつまでいい子でいるつもりなん？」
煽るように笑うショッピはその言葉を吐いて、去っていった。左頬の傷が羨ましくて仕方なかった。

後日。俺の左頬にはショッピとお揃いの紅葉ができた。