空想と葉桜【d！】【npl】 (ページ36)

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94.殺された天使【rbr】ページ36

「Aも、俺を殺すんやな」
あの日、ロボロは私の目の前で飛び降りた。
私はいまだにそれを夢に見る。

「やっほ、ロボロ」
「A！昨日ぶりやな！」
病室の窓からひっそりと外を見つめていたロボロは、私の挨拶にぱあっと瞳を輝かせて私を見つめる。
「元気？」
「おん。元気やで」
私は買ってきたリンゴをロボロに渡して、ベッドのそばにある椅子に座る。ころころと手でリンゴを転がすロボロは楽しそうに見えた。それもこれも全部嘘なのかもしれないけれど、それでも私がここに来なくていい理由には繋がらないのだろう。
「ねえ、外行く？」
「！おん！」
楽しそうな声色で私に話しかけてくるロボロは楽しそうに見えた。私にはやっぱりそれが嘘なのか本当なのか、いつまでたってもわからない。

車椅子を押して、病院の敷地内の庭を歩く。ふわりと優しい風が私とロボロをくすぐる。
ロボロは「風が気持ちいいなあ」と楽しそうに笑っていた。私はコロコロと車椅子を押す。
「ねえ、そろそろ、私じゃなくてもいいんじゃない？」
ずっと言いたかったことを、なんてことないみたいな声で伝える。ロボロは少しの沈黙も許さずに、冷えた声で空気を震わせた。
「だめ」
ロボロの発するその声はあまりにも無機物に近い。
「だめやで。Aはこれからずっと、俺のそばに居続ける義務がある」
ロボロはそれだけを言うと、また貼り付けたような笑みを浮かべるのだろう。無機物に近い、あの笑みを。