90.だってこんなにかわいいから！【shp】 ページ32
「ショッピくん、恋人と別れた方がええと思うよ」
また言われたな、と事実だけを思った。
最近、知人に会うたびに掛けられる言葉だ。女性関係で拗らせまくった結果俺に助言をよくくれるようになった大先生や、純粋にこちらを心配してくれているトントンさんやエミさん、ロボロさんだけではなく、基本的にこういうことは「見ているだけで面白いから」という単純な理由であまり首を突っ込んでこないコネシマさんやチーノ、シャオロンさんやゾムさんあたりからも、俺はアドバイスというか忠告というか、そんな感じのことをよくもらうようになった。
「いや別に俺、Aと別れるつもりないんで」
家にいる俺の恋人のAは駄目人間だーーと表現してしまうのは簡単だが、ならばどこらへんが駄目人間と呼んでもいい理由になっているのかと言われれば、常識に合わせて生活できていないから、と言わざるを得ない。だけど、俺以外が表現しようと思っても、いまのAを表現する言葉は、多分それが一番正しい。
髪の毛はガタガタだし(俺が目を話した隙に工作用のハサミで自分で切っていた)、いつも焦点の合わない瞳のままふらふらとベッドかリビングのソファにいるだけだし(ODをしているからだと思う)、利き手とは逆の手にビッシリと傷跡はあるし(お察しの通り自傷行為である)、まあ、まともな女ではないことは一目瞭然だ。ちなみに今現在Aは仕事をしていない。俺が養っている状態だ。Aの駄目人間レベルは鰻登りだな。
どう考えても地雷案件だ、と女の地雷という地雷を踏みまくってきた大先生は言っていた。
そんなこと、俺にはどうでもいい。
だって、かわいい。Aがかわいくて仕方がない。
俺を頼らないと生きていけないAが、社会に出て世界と関われないAが、自分を傷つけなくては呼吸すらできないAが、病院すら行けずに俺の家で縮こまっているAが、愛おしくてたまらない。
一生俺のそばで生きるだけのことをしていてほしい。
俺はそれくらいAに惚れ込んでいる。
「だって、A、めちゃくちゃ可愛いんですもん」
俺のその答えに、目の前の彼らはいつもただ顔を歪めるだけだ。
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