87.まるで物語のような恋でした【em】 ページ29
ロミオとジュリエット。ウィリアム・シェイクスピア。好色五人女。井原西鶴。ロリータ。ウラジーミル・ナボコフ。源氏物語。紫式部。レモン哀歌。高村光太郎。はつ恋。舞姫。森鴎外。こころ。夏目漱石。風と共に去りぬ。マーガレット・ミッチェル。痴人の愛。谷崎潤一郎。風立ちぬ。堀辰雄。初恋。島崎藤村。斜陽。太宰治。
「あとは、何を読めばいいと思いますか？」
「普通の恋愛小説とは言い難い内容の物も入っていると思うんだが……」
最近のエーミールには、知人に絶対に聞いていることがあった。それは「貴方のお勧めの恋愛小説は何ですか？」という問いであった。
「そもそも、読んでわかるようなものなのか？」
「…………何かの参考になるかもしれないので」
彼が恋愛小説を探しているのには、もちろんそれらしい理由がある。
エーミールは恋に落ちた。それは彼の中で初めて感じたもので、彼は最初、自分は何かの病気なのではないかと疑ったくらい、彼は恋に鈍感だった。
そして、第三者(あえて明言はしないが、よく遊んでいるあの辺りの友人の誰かである)に指摘されて、初めて彼は、自分が恋に落ちていることに気がついたのだった。
けれど、彼は恋愛の経験が極端に少なかった。偏っていると言ってしまってもいいかもしれない。
だから彼は勉強することを心に決めた。一人でひっそりと心に決めて、行動に移した。
それが、文学から恋のあれこれを学ぶ、ということだ。
「それで、成果の程は？」
「……………………。」
グルッペンの問いに、エーミールは無言で答えた。十分すぎる回答だった。
グルッペンはふう、と溜息を軽く吐く。エーミールの片恋相手ーーそれはAという名の女性なのだがーーについては、彼の知人達、つまりはいつも集まって遊んでいるメンバー達も何となくだが知っていた。なんならエーミールと彼女の仲を進展させるために、あれやこれやをしたメンバーもいる。そして、全員が知っているのだ。
エーミールの空回りに限りなく近いが空回りと表現するにはあまりにも勿体無いアピールの数々が、彼女にはうまく伝わっていることを、きっとエーミールは知らないのだろう。
「まあ、がんばれ。俺は応援している」
「最近、皆さん雑じゃないですか？」
目の前の男がハッピーエンドを掴み取る日も、案外近いのかもしれない。
88.ネバーランドには戻れない【sgr】→←86.紛い物の宝石【shp】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
