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81.束の間の逃避行【kn】 ページ22
『23時に駅前で待ってる。』
夕飯を食べ終えて、お風呂も入り終わり、さて今から何をしようか、という時間に、私のスマホが軽快な音を鳴らした。そこには、そんな一言だけが書かれている。
それを目に入れた瞬間、私の脳内は計算をする。服を選んで着る時間、化粧をする時間、そして家から駅までの時間を全部計算して、よし、いける、と確認した後、行動に移し始めた。
彼が好きだと言ってくれた一番お気に入りの服を着て、化粧も少しだけ頑張ってみた。時間に余裕があったので、水色のマニキュアも塗った。空のような色は彼に似ていると思う。
まるでデートみたいだ。
私は財布とスマホだけを持って、寝静まった我が家から出た。
「お、来たか」
対するコネシマ君は制服だった。
学校が終わってからも家に帰らずにこの辺を彷徨いてらしい彼はスマホをいじっていた。
「おまたせ」
「ん」
コネシマ君が手を差し出す。冷え切った彼の手を私は優しく握る。私たちは改札に吸い込まれるように進んだ。
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