今日:33 hit、昨日:6 hit、合計:4,657 hit
小｜中｜大
＊ ページ3
本当に突然だったと思う。数十秒前までは最近やったゲームの話をしていたし、数分前までは大学についての話をしていた。本当に脈絡なく、いきなり告白されたから、俺は最初、本気で聞き間違いかと思った。
「え？」
俺がAさんの顔を見た時、Aさんは今まで見たことないくらい真剣な顔をしていて、そこで聞き間違いじゃなかったことを察する。
そしてそこから俺は、なぜか黙ってしまった。“好き”という括りでAさんを見たこともなかったし、突然のことに脳が追いつかなかったから、なにを反応していいのかわからなくなってしまったのだ。俺はAさんの顔を見れなくて、視線を下に向けた。
長い長い沈黙の後、次に口を開いたのはAさんだった。
「……突然ごめんね。返事は、大丈夫だよ」
俺が口を挟む隙もなく、Aさんは教科書の入っていない軽い鞄を持って、教室を早足で出た。追いかけたほうがいいって思ったのに、足は動かなかった。
ーーあの記憶は、青くて苦い。
いつかきれいな思い出にできる日が来るのだろうか。多分、無理だろう。
あの時、俺はAさんに何かしらの気持ちを伝えるべきだった。
そうすれば、きっと未だに桜の季節に囚われることはなかった。
俺の脳裏にはずっと、桜の花弁と泣きそうな顔をしていたAさんが焼き付いている。
70.ぼくの耳の宝石【zm】→←68.桜の下に置き去りにした物【ci】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
