77.年季の入った湾曲愛【ut】 ページ17
「似合っとらんよ」
幼少期、私の記憶に残っている中では、初めてアクセサリーをつけた時のことだ。頑張って溜めたお小遣いを使い、近くのかわいらしい個人経営の雑貨屋さんで買ったものは、青いリボンだった。
元々一目惚れしていたのだが、小学生のお小遣いでは少し足りなかった。私は漫画もお菓子も我慢して、貯金をした。
それをつけた私を何回想像して眠りについただろうか。そしてついに私はそんなささやかな願いを叶えた。
それをつけて小学校に行った日、友達は皆、口々に「かわいい」「似合ってる」と褒めてくれた。純粋に嬉しくて、ふわふわとした気分だった。
そして誰かがたまたま私たちの近くを通った男子ーー私の幼馴染の鬱に声をかけた。
「鬱くん、見て見て！Aちゃん、かわいいでしょ？」
鬱は私をまじまじと見て、そしてにこりと笑って、私に言った。
「似合っとらんよ、全然。可愛くないわ」
空気が凍るという瞬間を初めて経験したのはその時だ。
女子全般に優しいあの鬱が、そんなことを言ったのだ。その場にいた鬱と私以外の全員が唖然としたし、鬱は特に何か気にすることもなく、その場を去った。
そのあとは、まあ、鬱の悪口大会が始まった。先ほどまで私を褒めてくれた子たちだとは思えないほど一転して、皆で鬱を罵倒しまくっていた。女子の怖さを思い知った。
鬱に最初に話しかけた子が本当に申し訳なさそうに謝ってくれたことを一番鮮明に覚えている。「別に××ちゃんのせいじゃないよ」と私は言った、と思う。確かな台詞は覚えていないけれど、それは今でも変わらない本心で、別に隠すほどでもない本音だった。
だって鬱は、私のやることなすこと、全部否定するから。
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