プロローグ ページ1
あぁもう最悪だ。
今日はいつものカフェでのアルバイト。
基本的にキッチンしかやらないんだけど、
訳あって配達に駆り出された。
ところまでは別に良かったんだけど。
ない。
私にとって、命の次に大事なそれがない。
なんで？数秒前まであったのに、そんなすぐ消える？
今いるのは都内のスタジオのロビー。
配達の商品で両手が塞がってて、商品を床に置く訳には行かず、視線だけで探してみるも見つからない。
あんまり待たせる訳にも行かないし、何よりこんなところでキョロキョロして不審者だと思われるのは困る。
はぁ、後で探すか。
パッと渡して帰れば大丈夫だよね？
エレベーターに乗って2階を目指す。
ここかな？
ノックして扉を開けると、広いダンススタジオにいくつかの机が並べられていて、中央に4.5人の男性が集まっていた。
え、ここで合ってるよね？
恐る恐る近寄ると、手前にいた長身の男性が急に振り返って目が合う。
｢だれ？｣
うん、たぶんそう言った。あまりに怪訝そうな顔で見つめられるからちょっとビビってしまった。
慌てて手に持っていた商品の袋を半ば押し付けるように渡して、深くお辞儀した。
よし帰ろう。
再びドアに向かって歩き出し、ドアノブを引こうと思ったら、扉が勢いよく開いた。
いたっ！
おでこを強打し、あまりの痛さにうずくまる。
あぁもう悪いことが起きる日は、とことんだな！
私の目の前に誰かが座る気配がして、ふいに視線をあげると。
そこには、会いたくて会いたくて、でも会いたくなくて。
私の1番大好きな笑顔ではなく、少し困った顔をした彼がいた。
その困った顔は、みるみるうちに驚いた顔へと変わり、
｢A？｣
久しぶりに私の名前を唇がかたどった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はゆ | 作成日時：2023年12月20日 19時
