５９.叫び ページ13
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それは絶対に嫌だった。
シリウスが大切だからこそ、巻き込みたくない。
「俺に言えないことか？」
「……」
その言葉にも、何も答えられない。
言えないことではない。私が、言いたくないだけで。
シリウスの手が、幾分か強く私の肩を抱き直した。
彼の温もりがこんなにも苦しく思うことなんて、今まで一度もなかったのに。
この温もりや優しさを、すべて手放せたらどれだけよかっただろうと今思う。
「…また何か、1人で抱え込もうとしてるだろ」
僅かに怒りを含んだ、その言葉。
それは違う。と僅かに首を横に振った。
視界がボヤける。
私はなんで涙を浮かべているのだろうか。
「俺は、そんなにも信用できないか？」
「…違う！」
咄嗟に否定する。
違う。そうではないのだと。
貴方のことを信用できないのではなく、私自身を信用できないのだ。
もう何がなんだかわからなくて、訳もわからずに首を横に張り続けた。
ただシリウスに、それは違うのだとわかってほしかったのかもしれない。
涙が膝に落ちる。
ぽたぽたと音を立てて、毛布に吸い込まれた。
「…ほら、泣くなよ」
正面から抱きしめられて、背中をさすられる。
シリウスの胸元に顔を埋めて、彼の匂いで身体中を満たす。
その間にも愛おしさが胸の中に溢れて、どうしようもなくなった。
この温もりを手放したいと思うのに、この温もりが心底愛おしい。
相反する感情が私をさらに混乱の極みへと落とし込んだ。
彼の背に腕を回す。
そうすれば、さらに強く抱きしめてくれる。
その優しさが、私の胸を切り裂いていく感覚がした。
「マリア…、好きだよ」
「……」
「俺は、お前が心底愛おしいよ」
そんな優しい言葉をかけないで。
私を甘やかさないで。
私を嫌いと言って欲しい。
そうやって叫びたい。叫んで、この腕を振り解きたい。
そうすれば楽になれるとわかっている。のに。
「マリアを守るのは、俺でありたい。
…だから、マリアが不安に思うこと、怖いと感じるもの、守れなくても、俺が1番側にいたい」
また、シリウスは同じことを言う。
その言葉に、言いようのない安堵が胸に広がった。
___『マリアを守るのは、俺でありたい』
学生時代にも言ってくれた、その言葉。
「俺のわがままだから…」
「でも、今は違う……」
その言葉を、情けないほど弱々しい声で否定する。
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こっこ(プロフ) - 初めまして！コメント失礼します！とても面白くて1作品目から一気に読ませていただきました！もう更新のご予定はないのでしょうか？お待ちしております (2021年12月5日 22時) (
レス) @page22 id: 87bbda5ac3 (このIDを非表示/違反報告)
ihok(プロフ) - 麗さん» ご指摘ありがとうございます。修正致しました。 (2021年5月28日 13時) (レス) id: 88eeb2d42f (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 11ページにも同じように リア という名前が出てきています (2021年5月28日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 9ページ リア というのは夢主のことでしょうか？ (2021年5月28日 13時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
ihok(プロフ) - ぴっぴさん» ありがとうございます！そう言って頂けてとても嬉しいです…！とても励みになります！ (2020年12月16日 21時) (レス) id: 88eeb2d42f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ihok | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/ihok__
作成日時：2020年11月13日 14時
