42魚 ページ19
『ただいま〜…』
俺は今日、商談に出ていた。
今まで小さな出版社にしか見向きをされなかった俺の作品が、大手の目にとまりうちで一冊出してみないかとオファーが来たのだ。
俺にとってはまたとないチャンス。
なんでも、俺らの動画を見た編集者の1人が連絡してくれたらしい。まさか視聴者だとは思わなかった。
それがとんだ空回り。
その編集さんの上司に言われた一言で俺は今後この会社には関わりたくないとさえ思った。
『なぁにが「芥川賞とか取ってから来てくれる?」だバーロー!俺は文書きじゃねぇんだよ!』
強めに仕事用のカバンを玄関に投げると、部屋の奥からシルクのうめき声が聞こえた。
『諒〜?いんのー?ただいま〜』
寝室から声が聞こえているので、とりあえずスーツを脱ぎ捨てネクタイを外しながら近づく。
泣いてんのか?
『なぁ、何して…うわぁ!』
部屋は血塗れ、傍らには血のついた包丁、シルクの白いパーカーは腹の部分が赤黒く変色している。
『おい諒!諒!聞こえるか?!おい!』
「ぐっ…アイス……」
『何があった?!ちょっと待て今救急車…じゃなくてまずは止血…!』
俺は首からネクタイを抜き取りギリギリではあったがシルクの胴に巻いた。
そしてワイシャツを脱ぎ患部を抑える…ところでシルクが小刻みに震えていることに気づいた。
『大丈夫か?寒かったりする?ちょっと待ってろ』
毛布毛布…とクローゼットを漁っているとシルクの大きな笑い声が響いた。
「んはっはっはっ!ドッキリ大成功〜!」
『へ…?』
どこに隠れていたのかカメラを持ったマサイまで出てきて二人とも大笑いしている。
『……へ?』
「分かってない!アイスまだ分かってないよほほほ…」
『ドッキリ…?りょ…シルク刺されてないの…?』
シルクはパーカーを捲り全く傷のない綺麗な腹を見せつけてきた。
『う〜〜っ!!まじ心配したんだからな!!バカシルク!!』
マサイのカメラから逃げるようにシルクの血糊で汚れたワイシャツを洗いに洗面台に向かった。
「アイスー!ドッキリの感想はー?」
そんな俺を馬鹿みたいな笑顔で追ってきた二人。
俺に動画締めろってかクソッタレ!
『……シルクもマサイも大っ嫌いだ!』
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ぐるり。(プロフ) - しみずさん» んわー!しみずさんありがとうございます!無意味なパート2ですが、今後ともよろしくお願い致します(ノ゚Д゚)ノ↑↑↑ (2018年1月13日 9時) (レス) id: d12cac2abb (このIDを非表示/違反報告)
しみず(プロフ) - わわわ、いつの間にパート2…!!続編おめでとうございます、これからもひっそりとファンで居させてください…!!無理のなさらない程度に更新ふぁいとです…!! (2018年1月13日 3時) (レス) id: 516966c55c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぐるり。 | 作成日時:2018年1月12日 18時