南波刑務所のタラシ修理員２【男主】

でも残念！この作品の主人公は何もありませーん！…よね？ ページ34

猿門に対し気持ち悪いくらい親切にしてくれるAへの警戒心が薄れてきた頃。


Aは５舎鍛錬場の修理をしていた。


原因は猿門と猿鬼の手合わせ。猿門の攻撃が避けられ、もれなく地面がへこんだ。


誰かがつまずく事があってはいけないと、翌日には直されることになった。


しかし鍛錬の５舎というだけあって朝早くから鍛錬を始めるので、なるべく早く直さなければならない。


鍛錬は一日休むだけでも体が鈍るのだ。


そのため仕事時間外に駆り出されてしまった可哀相なA。


それなりに仕事が出来るがために、新人はたくさんの経験を積むべきと行かされた。


もちろんこの分の金は出ないし、誰も助けてはくれない。


唯一頼れそうなしゅんは朝４時まで起きて１時間前にようやく寝た。


そんな状態のしゅんを起こそうものなら二度と太陽を見られない。


半分夢の世界へ旅立つAに猿門が声をかけた。


｢A、大丈夫かよ…？｣


『うん？大丈夫だよ〜。…あれ？』


｢A？｣


『いや…なんでも…』


ポンヤーとした顔で猿門を不思議そうに見る。


『あ、そうだ。ちゃんといい子にしてるんだよ？兄さんに迷惑もかけちゃいけないからね？』


｢んな事分かってるわ！俺を子ども扱いすんなよ！こっちの方が年上だぞ！｣


『そうだね〜。もう人間年齢で…20歳はいったよね？』


｢A誰と話してんだよ…？｣


｢どうかしたのか、猿門｣


｢兄…主任！｣


『あれ？ミサちゃん大きくなった？毛並みも良くなっちゃって…』


｢…猿門、しゅんを呼んでくる。しばらく対応していろ｣


『ミサちゃんいつもは飛びついて来るのに…今日は来ないの？』


｢…対応していろ｣


猿鬼はいつもの真顔より眉間のシワを濃くして５舎を離れた。


Aの手は仕事をしているが目は仕事へ向いていない。


もはや人かも怪しいが、猿門を誰かと勘違いしているようだ。


30分ほどで猿鬼がしゅんを俵担ぎにして戻ってきた。


戻って来るまでに数個質問をAに投げかけたが１度も噛み合うことはなかった。


担がれているしゅんは小さく寝息をたてていて、どう考えても起きてはいない。


その頭を猿鬼が叩き、起きるよう促す。


｢…なに。俺が起こされた意味はあるの？｣


ようやく口を開くが口調は不機嫌そのものでまぶたもすぐに落ちてしまいそうだ。


｢Aを起こせ。しゅんにしか出来ない｣


猿鬼がしゅんの疑問に答える。


｢……｣


しゅんは寝ていた。

兄弟揃って寝起きが悪い→←やっぱり主人公は暗い過去を持っているものだよね！？

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