南波刑務所のタラシ修理員２【男主】

人々の分岐点 ページ30

『ムサシィ！出てこれたんだねぇ！』


｢おい、来れたのは俺が誘ったからなんだからな！｣


｢私が看守長に言ったからだ｣


｢確かに相当頑張ったって聞いたものね｣


『どっちもいい子だぁね』


Aが犬士郎とムサシを撫でる。


｢Aの立ち位置って何？子ども大好きなおとん？｣


｢ただの久しぶりに孫に会えたじいさんだろ｣


絶対ハジメと猿門は仲がいい。


そんなことを思わせるやり取りをする二人。


後に三鶴が押して来た台車に引かれることはまだ知らない。


そしてしんみりとしたやり取りをしていたとある二人の背後にAが現れた。


『九十九も来てんじゃあん…言ってくれなくっちゃあ…ねぇ？』


《〜〜〜〜〜！》


二人が声にならない悲鳴を上げた。


『なんだよ、人をバケモンみたいに…』


(びっくりした！びっくりした！びっくりしたー！)


九十九が心臓を押さえ心の中で叫ぶ。


｢Aさ…A、なんで後ろに…｣


『久しぶりの再会は印象に残るものじゃないとー』


｢もっと別の記憶に残るものでもいいだろ…｣


ジューゴも心臓を押さえ言う。


『二人とも仕草と表情そっくりだね？そんなに驚いた？』


《驚いたに決まってる！》


思いっきりシンクロした二人はニコニコ笑うAを見て、顔を見合わせて、笑った。


『ハハ、楽しそうでよかったよ。ほら、また何か来たみたいだよ』


滑らかな動きでAが指差す先には抱き合い回るウノと三鶴。


『猿門、犬士郎、大丈夫ー？』


Aはあとは好きにしろと言わんばかりに二人の前を去っていく。


｢ちょっと！アタシのことも心配しなさいよ！｣


｢うちの弟は女性を視野には入れてないから…｣


そんなやり取りを聞きながらジューゴは九十九に声をかける。


｢行くか？｣


｢…せっかくだし、いろいろやってみようかな｣


照れ臭そうに笑った九十九の笑顔は、役ではない、本当の九十九の笑顔に見えた。


ジューゴはこのきっかけを作ってくれたウノに、ひっそりと感謝する。



＿＿そこには幸せな時間が流れて＿＿


ーーー

娯楽室編が思いのほか長くなってしまい驚いています。


原作では短い九十九とジューゴのシーンですが、きっと大事なところです。


役者としての囚人としての九十九と向き合う人はまだ少ないですが、いつかはみんなが向き合い、協力し、九十九の歩みたい道を歩めることを願っています。


九十九イケメン

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