南波刑務所のタラシ修理員２【男主】

しゅんのイメージは骸骨 ページ11

ノックをして数分、骨張った手が内側へと扉を開けた。


｢あ…｣


ハニーの矢印がびっくりしたように動く。


Aの兄、しゅんは真っ黒だった。


髪はもちろんのこと服、ズボン、靴、そして目。


さらに顔も黒かった。


日焼けをしているという意味ではない。黒い仮面をしているのだ。


その仮面は、目と口の部分が三日月型に切り抜かれていてまるで笑っているように見える。


｢いらっしゃい｣


そしてその口は、動いていなかった。腹話術、というものだろう。


｢え、どう、いう｣


｢あれ？君達初めてか｣


『三舎のハニーとトロワね。矢印の方がハニーでメガネの方がトロワ』


｢二人ともイケメンだね。きっとモテモテなんだろうね。羨ましい。よろしくね｣


慣れているのかハニーの失礼な態度には触れずすっと二人に両手を差し出す。


｢あの、その仮面は…｣


トロワが控えめに尋ねる。


｢これ？ハハ、聞かないってことにしといてくれるとうれしいかな｣


仮面の奥の口が緩く弧を描く。


｢大した理由じゃないんだけど…ちょっと恥ずかしくて｣


｢そうですか｣


トロワはそれ以上追求しようとはせずに手を握る。


ハニーも探るような目で見ながら手を握った。


しゅんは四人を中に招き入れ好きな場所に座るように言った。


｢お二人さんは飲み物はどうする？｣


『お二人さん？』


｢ハニーくんとトロワくんだよ。一応初めましてだから｣


｢僕はミルクティーでお願いします｣


トロワはすぐに答える。


｢ハニーくんは？｣


｢…なんでも｣


聞こえるか聞こえないかの声量でハニーが言う。


しゅんは困ったように笑うとキッチンへと入っていった。


｢ハニーくんどうかしたの？あんな態度取って…｣


｢どうもしてねぇよ…｣


『……ハニー、あれでも一応俺とは血が繋がってるんだよ？』


｢…なんで、あんな仮面被ってんだよ｣


『今は顔を見られたくないんだよ。人見知りでね』


｢それでもいろいろあんだろ？なんであんな方法取ってんだよ！｣


勢いよくソファーから立ち上がる。


ハニーをAが見上げる形になった。


『…あるんだよ、いろいろ。他にもね』


｢なんだよ他にって…！｣


顔を歪めソファーに座る。


｢82番、やめなさい。みっともない｣


｢それにカッコ悪いよ｣


三舎の他の二人から呆れたような目を向けられる。


なにも言い返せず明後日の方向を見るハニー。


そこにしゅんが戻ってきた。

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