スキとキライの境界線

ダイキライ？ ページ15

『昨日坂口くんはバーで飲んだ時、取引の帰りと言いました。…でもそれは嘘です。』


「なに？」


『坂口くんの鞄を見たとき、上から煙草、携帯雨傘、カメラに戦利品の時計が入っていました。雨傘は使用後で拭き布に包まれていた。そして出張先の東京は雨…』


「雨が降って傘が濡れていた…それのどこがおかしい？」


「安吾は車で取引に行ったはずだ。どこで傘を使ったのだろう。取引の前じゃない。傘は時計の上に置かれていた。そして…後でもない。」


「何故だ？」


『あの傘の濡れ方から見て2,3分使ったものではありません。たっぷり30分使ったと見ておかしくないでしょう。でも、それにしては坂口くんの靴もスーツも濡れてなかった。取引が8時で私たちにあったのは10時。取引の後ではそんな短時間では乾かないです。』


「…着替えを持っていたかもしれない。」


「酒場からの帰りに安吾の車に乗ったけどそんな痕跡はなかったよ。私達の予想では安吾は取引には行かず雨の中誰かと外で密会していた。」


『知り合いの情報員が言っていました。情報員は店内には立ち入らず屋外で密会することが多いらしいです。外の方が向いているから…と。』


「安吾は情報員だ。誰にも開かせぬ密談なんてあるだろう。」


『なら言えばよかった。言えないって。…そうすれば私の兄さんも、もちろん織田作さんもそれ以上は何も聞かなかった。でしょう？』


「それなのにアリバイを作ってまで会を隠したかった理由は？」


カチャッ

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