じゅうさん。 ページ14
僕はAちゃんのことをよく知ってるようで、結構知らない。
例えば知り合った時の話をすると、こう。
鬱「…誰、君」
「は、はいっ！いえ！これ落ちてましたよ！」
鬱「は？…ああこれ僕のや、ありがとう。で、誰」
「Aです！」
鬱「うわ、知っとる…生徒会長のお気に入り」
中学三年、Aちゃんは二年の時。
Aちゃんの戦績をいくつか紹介しよう。
圧倒的カリスマを持つ生徒会長(グルちゃんやな)、のお気に入り。
漂う小動物感、年上ウケ、そして謎のパーティーにクリスマスツリーの如く祭り上げられるようなキャラクター。
体育祭や文化祭の後には一部にこんな言葉が小さく流行った、Aちゃんを見守ろうの会。
いやなんやねんそれ、どんな人間やねんいや神かなんかか。気持ち悪いわ近寄りたくない。…と思っていた時期もある。
ところがAちゃんの方は、俺のような人間が嫌いじゃなかったらしい。
もう知らない、と吐き捨てて去っていく女。名前なんやったっけ、…うーん。
呼び出されて行ってやったらこれや。
時間もない、持ってるプリントはなぜか重く感じるし、…この後は委員会だ。あれは忘れて、ついでに委員会も忘れて帰ってしまおうか。
と、俺の腕から一枚プリントが逃げてしまったらしい。…そして冒頭へ戻る。
「図書委員なんですね、一緒に行きましょう」
鬱「いや、君一緒に行く人おるやろ」
「鬱先輩以外いませんよ？」
鬱「いやあの、…まあええわ。」
俺知っとるわこの感じ、見たことある。
最近は特に。
この人とおるとアホほど目立つ。会長には睨まれるかもしれないし、女子は集ってくるし、男は冷やかすし。
あーどっか行ってくれへんかな、俺無遠慮にじろじろ見られるの嫌いやねん。
「鬱先輩？体調良くないんですか？」
鬱「あ、いや大丈夫やで！ありがとう」
Aサンは安心したように笑う。
これは猫を被らざるを得なかった。
だめだ、この人に気に入られたら生徒会長敵に回すんやで。
いやもしかしたら、もし仲良くなるなら、味方になってくれるかもしれない。
と、ひそひそと女生徒の話し声が耳に入る。
ダメや俺色々だらしないんやった、会長さん俺のこと好きにならんわ。
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作者名：癒葉 | 作成日時：2018年8月11日 17時
