いち。 ページ2
「縁結び屋のAと申します。」
がっちり俺の腕を掴んで一言。
ゾム「ああ…どうも」
「ご説明しますね。ここは私が以前魔法をかけておきました。あの人と、あの人がここに来たとき、結ばれるように。」
魔法。なんて現実離れした響き。
仕事終わりにここにいる俺とは生きてる世界が違うようだ。
「あの足のところの光、見たでしょう。綺麗な桃色でしたね！大成功です！これからずーっと、仲良くやっていける人たちですよ！！」
はあ、と漏れてしまった呆れたような声を気にせず、Aサンは俺の手を取る。
中身が変だと判明しても、顔の構造は変わらない。俺を見上げる整った顔は、変なやつには到底見えない。
こんな女の子の頼みならなんでも聞いてしまうかもしれない。
「よろしかったら、またお手伝いをしてくれませんか…？」
ゾム「無理」
数日後。
「ぞっ、ゾムさん！いいから手伝ってくださいよ！」
ゾム「うるせえここ二階やぞ！なんで窓から来れんねん！」
俺はまだこの女に付きまとわれている。
きっかけとなった同僚二人が付き合い始めたという知らせを受けたその夜、自宅である。
そう、自宅である！！
こいつ訴えたろかな…
「今回は恋仲じゃありません！友人にさせてあげたいっていう依頼なんです！」
ほらほら、と依頼状を見せるA。
「このコネシマさんって人、知り合いでしょ？昨日仲良く食事してたの見ましたから！」
ゾム「このストーカー…」
「報酬は分けてあげてるのに…」
そうなのだ。俺は何故か大金をもらっているのだ。
これでも報酬の８分の１だとか。なんでそんなに金払うんやろ。
「いいですか？私がこの人を喫煙所まで連れてきますから、貴方はコネシマさんを連れてきてください。」
ゾム「ごめん無理、帰って」
「そんなあ…」
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作者名：癒葉 | 作成日時：2018年8月11日 17時
