おはようございません/兄弟おつ ページ6
カーテンから差し込む朝日。隣に寝る男。無言でシーツを手繰り寄せた私は呆然とした。
朝チュン。
これがいわゆる朝チュンである。
苦節2X年、運命の殿方のためと自分を騙し騙し守ってきた純潔が、目覚めたら突然散っていた。
こんな事があって良いのか。私はこの現実に断固対抗する所存である。
(…よし、寝よう!)
ぼふっと枕に倒れ込んで目を瞑る。これは夢だ。きっと疲れているのだ。奮発して買ったはずのダブルベッドが、何故だかぎゅうぎゅう狭く感じるのは間違いなく気のせいだ。
「うーん…」
「わっ!」
隣から伸びてきた手に視界を塞がれる。やだ温かい。
現実味を帯びた厚い胸板の温もりに、私は男の腕の中でひっそり涙した。
彼の名は弟者くん。
可愛い後輩だが、その声は老若男女をトリコにし、耳元で囁かれた課長が会議中甘い吐息を漏らして膝から崩れ落ちたのは記憶に新しい。
「弟者くん起きて…」
たくましい体に頬が熱くなるのを感じながら胸板を押し返す。んが、と唸った彼の拘束が解けてホッと一息、体を起こそうとすればお腹に腕が回ってベッドに引き戻された。
文句を言おうと隣を見るも、彼の腕はベッドの外に投げ出されている。
じゃあ、この腕は?
目をぱちくりさせていると、背中にぴっとり感じる人肌。後ろから回った腕がシーツごと私を掻き抱いた。
「ぎゃあぁっ!」
「もー、なぁに朝から…あれ、兄者おはよ」
「…はよ。お前何でいんの」
背後の会話は無視してシーツをひっ掴み、転げるように寝室を出る。ベッドが異様に狭かったのは、つまりそういう事だ。
彼の名は兄者。
いけ好かない同期で、弟者くんの兄。社内の女子からは圧倒的人気を誇り…
震える指でスマホをタップする。ワンコールで繋がった電話から、『もしもーし』と聞き慣れた上司の声。
「も、もすもし!?私です!すみませんが今日は休みたい所存でして!」
『あら、そうなの?』
リビングで一人テンパっていると、不意に背後のドアが音を立てる。
「実は俺も休もうと思ってたんだよね」
バスタオルを腰に巻き付け、風呂上がり感を存分にかもし出す彼は、片手にスマホを握っている。
時間が止まったかのように思えたその時、私の体を包んでいたシーツがストンと落ちた。
彼の名はおついちさん。
もはや説明する気力は残っていない。
ちょっと会社辞めます
(探さないでください)
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はやさか(プロフ) - へーすけさん» 初めまして!そして、返信が一年ぶりという非礼を詫びさせてください…orz 素敵なんて言っていただいたの初めてでとっても嬉しいです〜!ありがとうございます! (2020年12月18日 21時) (レス) id: bd75fcb4fa (このIDを非表示/違反報告)
へーすけ - 初めまして、へーすけと申します。はやさかさんの素敵な夢小説を読ませていただきました。誠に勝手ながらこっそりと応援しています。 (2019年7月22日 21時) (レス) id: 53845ff19b (このIDを非表示/違反報告)
はやさか(プロフ) - みぃさん» 返信遅くてすみません!!私も語彙力と文章力の無さに日々悩まされております……ありがとうございます、またみぃさんの作品も拝見させていただきますね! (2019年6月24日 16時) (レス) id: bd75fcb4fa (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - はやさかさん» 返信ありがとうございます!!私も色々書いておりますが語彙力が無さすぎて汗これからも頑張ってください!! (2019年1月6日 0時) (レス) id: f861e836fe (このIDを非表示/違反報告)
はやさか(プロフ) - みぃまさん» 遅くなってしまい御免なさい!有難うございます、この一年ろくに書けなかったので今年は沢山書きたいです! (2018年12月29日 10時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はやさか | 作成日時:2018年3月29日 22時