本日はお日柄もよく

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「やっぱり！隠してたのねこのスケベ！」

「…A、俺がいない間に酒飲んだ？」

「変なこと言ってはぐらかさないでよ！」

「えー？じゃあ何なのそのテンション」


怒 っ て る ん だ よ ！！！

反省する素振りを見せない彼に腕を振り上げる。弟者はニコニコと笑うばかり。しまいには「おいでー」だのと腕の中にすっぽり包まれてしまった。
私は犬じゃない！

キイ！と腕の中でジタバタ暴れる私に、「やっぱ飲んでんだろコレ」と独り言ち、弟者は片手間にテレビを点ける。私を抱きしめる腕は解かないまま。

こんなことで許してもらえると思ったら大間違いなんだから。ぜったいぜったい許してやんない。弟者なんて大嫌い。


「ねえ！ねえってば！聞いてんの！？」

「ん〜？んー」

「ンーじゃない！こっち見なさいよ浮気者！」

「いって！ちょっと落ち着け……え？今なんて？」


キョトンとする弟者。ぼたぼたと大粒の涙を流す私に気がつくと、あたふた焦ったような素振りを見せる。
今さら何やったって、もう遅いよ。


「えーっとぉ…。A、ちょっと俺の話聞いて？」

「ぐすっ…私もう実家帰る…」


スマホを取り出す私の隣、「待てって！」「ちゃんと話すから！」だのと騒ぐスケコマシ。


「A、俺が悪かったから、とにかく話を…」

「もしもしおついちさん？今からそっち行くから。布団出しといて」

「ヤメなさいっ！おついちさんち実家じゃねぇだろ！」

「おついちさんとイチャイチャするっ！私だって浮気してやるっ！」

「だからっ…！あーもー！A！」


しゃくりあげる私の目と鼻の先、ずいっと突き出された真紅色の小箱。
スウェット姿で首にタオルをかけたまま、王子様みたいにひざまずく。


「…メールのは、ただの相談相手。Aが思ってるようなことは一切ない」

「……」

「指輪はコレね」


深い赤に包まれてキラキラ輝くそれ。
何も考えられず目を丸くしていると、燃えるようなワインレッドが私を見詰めた。


「俺はこれを、Aに…Aのここに、嵌めて欲しいと思ってる」


前髪から垂れた滴が、真剣な弟者の頬を伝う。
くすぶっていた怒りはいつの間にか消えていた。


「…俺と、結婚してください」


結婚までのエトセトラ


(…君たち、抱き合って何やってんの？)

(あ、おついちさん！私たち結婚します♡キャハ♡)

(ハ？お前さっき俺とイチャイチャって、)

(なんかごめんおついちさん。俺の妻が)

(妻って！ヤダもーマイダーリン♡)

(………)

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