男はオオカミなのよ/兄弟おつ ページ18
パチンと口紅のキャップを閉めれば、耳元でイヤリングがきらきら揺れる。なんか、今日はイイ感じ。アイラインもヨレてないし。心なしかお肌もツヤツヤしてる気がする。
姿見の前でご機嫌にワンピースの裾をひるがえし、私はルンルン気分でリビングの戸を開けた。
ソファに仲良く並んでコントローラーを握っていた三人の男が、テレビから視線を外してパッと私を振り返る。
途端、ハトが豆鉄砲を食ったような顔でキョトンとする彼ら。
ふふん、見るがよい。なんたって今日の私は一等可愛いのだ。
卸したてのシフォンワンピに、ズボラ女と名高い私には珍しいフルメイク。ふっくらセクシーなオーバーリップと、ザ・男ウケなきらきらアイメイクに胸がきゅんとするだろそうだろう!
「…なんかケバい」
「ぶん殴るわよ」
ドヤ顔で腰に手を当て仁王立ちする私に、シラーっと兄者の冷たい視線。人が気合入れて作った顔に何てこと言ってくれんのよこの男。
ジトっと睨みつける私に、兄者は口角を上げた。
「わり。つい本音が」
「よーし、その喧嘩乗った。歯ァ食いしばりな」
「ちょっと落ち着きなさいよ君たち」
真顔で拳を固めれば、見兼ねたおついちさんが仲裁に入る。ソファの背もたれに頬杖をついて、私にニッコリ微笑む彼。
「Aちゃん、今日はずいぶんおめかしね」
「うん!ワンピもおニューなの。どう?」
「んふ。ハイハイ、似合ってるよ」
「うふふ」
おついちさんは私が欲しい言葉をくれる。
「欲しがりだなぁ」と笑う彼にすっかり気を良くして笑っていると、ずっと黙っていた弟者が「A」と静かに私を呼んだ。
視線を向ければ、ソファの背もたれに腕をかけ、じっとり私を見詰める彼。口元が腕で隠れて表情が見えないけど、何だか少し様子がおかしい。何か言いたげな瞳に首を傾げる。
「A、どっか行くの?」
「うん。会社の先輩とちょっとね」
「二人きりで?こんな夕方から?」
「だってディナーだもの。そんなに遅くならないよ」
ショルダーバッグにハンカチを詰めながら返答する。
私の言葉にしばらく黙り込んでいた弟者が、「…それオトコ?」いつにも増して低い声。
…ここに一つ言い訳をさせて欲しい。
片手間にカバンの整理をしていた私は、気付かなかった。
いつも温厚な弟者が、珍しく冷たい目をしてたこと。そして、弟者の言葉にピクリと反応した二人のアラフォーの眼底に、どす黒い炎がメラメラ燃え始めていたことを。
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はやさか(プロフ) - へーすけさん» 初めまして!そして、返信が一年ぶりという非礼を詫びさせてください…orz 素敵なんて言っていただいたの初めてでとっても嬉しいです〜!ありがとうございます! (2020年12月18日 21時) (レス) id: bd75fcb4fa (このIDを非表示/違反報告)
へーすけ - 初めまして、へーすけと申します。はやさかさんの素敵な夢小説を読ませていただきました。誠に勝手ながらこっそりと応援しています。 (2019年7月22日 21時) (レス) id: 53845ff19b (このIDを非表示/違反報告)
はやさか(プロフ) - みぃさん» 返信遅くてすみません!!私も語彙力と文章力の無さに日々悩まされております……ありがとうございます、またみぃさんの作品も拝見させていただきますね! (2019年6月24日 16時) (レス) id: bd75fcb4fa (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - はやさかさん» 返信ありがとうございます!!私も色々書いておりますが語彙力が無さすぎて汗これからも頑張ってください!! (2019年1月6日 0時) (レス) id: f861e836fe (このIDを非表示/違反報告)
はやさか(プロフ) - みぃまさん» 遅くなってしまい御免なさい!有難うございます、この一年ろくに書けなかったので今年は沢山書きたいです! (2018年12月29日 10時) (レス) id: 63c1855969 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はやさか | 作成日時:2018年3月29日 22時