花、そして散る*5 (ページ49)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:112,631 hit

49* ページ49

「ただいまー」

実家ではない、第二の実家？の前に立つ。
引き戸を開けて、帰宅を知らせれば、

花「お帰り。どうやった？初関西」

迎えてくれる人がいる。

家族じゃないけど、家族みたいな人。
花さん。お母さんの幼なじみで、親友。

私の親代わり？

お父さんとお母さんはちゃんと居るよ。

でも、一人っ子。

小さい頃は、お兄ちゃんが欲しかった。
今は、兄弟っていいなと思う。

勇人の話を聞いてから。

帰りの新幹線。

行きの時と同じ座席だった。

選手である勇人は、グリーン車。

職員の私は普通車。

グリーン車って、どんな感じなんだろ。

そんなことを頭に置きながら、窓の外に広がる一面緑の景色を見ていた。

東京では、晴れた日に富士山くらいしか見れない。後は、高尾山？見たことないや。

それくらい自然とはかけ離れていた。
だから、山がたくさんあるのが新鮮で、癒されて、心地よくなっていた。

遠征でたまった疲れが、眠りを誘った。

隣では、佐藤先輩が先に眠りについていて、私も眠りにつくことにした。

仕事を始めて覚えたこと、眠れる時には眠る。

どれだけ時間が経っただろう。

目が覚めた時、隣には佐藤先輩は居なかった。

でも、荷物はあるから、トイレにでも行ったのだろう。もう名古屋だ。

私も、ちょっと飲み物でも買おうかなって思って、席を立つ。

自動販売機で水を調達して、自席へと戻る。

隣の席には、黒い頭が見えた。

席に近づくにつれて見えてきたその顔は、佐藤先輩じゃない。

明らかに別人だった。

少しクルっとした髪の毛。

持ち主は、ネコのような笑顔を持つ。

「勇人？」

『お、A』

「いや、“おっ、A”じゃなくて。どうしたの？」

『新幹線の中くらい会ってもええやろって思って。ええタイミングでおっさんもおらんし』

「でも、ここじゃ一般の人たくさんい…」

喋っている途中で唇を塞がれた。

寝てるけど、当たり前に周りには人がいる。
ましてや、記者だっているかもしれないのに。

『最近写真撮れへんって、記者怪しがってるみたいやし。あっち行こっか』

「あっち？」

『俺らんとこ』

グリーン車は、疲れからか爆睡する選手で溢れていた。

勇人の兄弟の話、初グリーン車でたっぷり聞かせてもらいました。

私も、たくさん家族が欲しいな。