花、そして散る*5 (ページ35)

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35*Hayato ページ35

もう何分経つんやろ？

横になって、目瞑って。

寝たふり。

いや、寝れないだけや。

明日も試合で、早よ寝たい。

身体は凄い悲鳴を上げてんやけど。
全然眠られへん。

長野「じゃ、そろそろ俺帰りますねー」

阿部「あっ、俺も」

花「はーい。じゃあ、残りの方はお預かりしますね」

阿部「お願いします」

戸を引く音が聞こえた。

阿部さんと長野さん、帰ってったんやな。
二人とも全然飲んでへんかったし。

俺も帰ろっかな。

内海さんのいびきうるさいし、ここじゃやっぱり眠れんわ。家のベッドでゆっくり寝よう。

「っふふ、まただ」

ん？

A？

「もー、風邪引いちゃうじゃん」

そう言いながら、俺に近づいてる気がする。

あ、そうや。

俺、シャツがはだけてんやわ。
絶対お腹が出てんや。それで、風邪引いちゃうってことか。

優しい彼女は、気が利く。

ちゃんと俺のシャツを直してくれた。だらしない俺なのに。

あれ、これって前にもあったよな。

Aが俺のはだけたシャツを直してくれたって。俺はがっつり寝とって、覚えてないけど。確か、あの夢を見てた時の。

「あれ？今日は違う夢？」

え？待って。

俺が抱きつくって癖、分かっててシャツ直したん？ずっとこの距離から離れんし。

もしかして、抱きしめて欲しいん？

だったら、いくらでも抱きしめたるわ。
俺だって、最近充電不足やから。

んっ……

そう思ってると、額に何か温かなものを感じた。A、キスしてきた。

こうなったら俺だって動くで。

せやのに、

なんで携帯いじってんの？

俺だってね、男なんだから。
健全な男なんだからね。我慢するのも大変。

うっすら目を開けると、俺に背を向けてLINEかなんかをやっているAが見えた。

波留ちゃんとのやり取りなんか、内海さんが凄かった、とか言ってる。

『俺は？今日の俺はどうやった？』

「えっ！？あっ、勇人」

俺だって、今日凄かったやろ。
ホームランも予告通り、いやそれ以上打ったし。たくさん褒めてほしいの。

『かっこ良かったやろ？今日の俺』

ちょっと意地悪な顔して聞いてみると、

「カッコよかったよ…、一番」

ヤバイ。今、最高ににやけてるわ。