花、そして散る*5 (ページ31)

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『22時26分。ギリギリセーフやな』

左腕に光る腕時計。

高級ってのがピッタリなくらい、綺麗。

袖をずらして、時刻を確認すると、勇人はそう言った。

「ふー。間に合った」

『じゃっ、只今より引き換えを開始します』

勇人の手には、ホームランボールが握られている。予告通り、有言実行だ。

「はい、お願いします」

真っ白なボール、“引換券”を渡す。

『はい。今日は開幕戦だから、二倍サービス』

「っふふ。ありがと」

２打席連続ホームランを放った勇人。

ホームランボールは２つある。１つには、“第６号”、もう１つには“第７号”と……

“これからもよろしくな、A”

って書いてあった。

初めてのメッセージ入り。

宝物がまた増えた。

『どこ行くん？』

「部屋に、ボール飾ってくる！」

急いで、部屋に向かう。

机の上にはホームランボールが並んでいる。
勇人と私の出逢いとなった、第1号から順番に。

ボールケースは１つしか用意してなかったから、１つだけ入れる。もう１つは明日買ってこよう。

下へ降りると、勇人が個室の戸の隙間から顔を覗かせていた。

こっちこっちと、手招きしている。

『Aも入って』

「うん」

個室に入ると、みんな程よく酔っていた。そして、内海さんと山口さん、澤村さんは完全に酔いが回っていた。

阿部さんが内海さんに乾杯の音頭を取るように言っていて、グラスを片手にして座っている。

内海「じゃあ、俺が」

阿部「おっ、パーフェクト」

内海「では、我らが巨人の開幕戦白星スタートと俺の完全試合を祝って、乾杯ー」

「「乾杯ー」」

お酒が飲めない私は、リンゴジュースで乾杯。
お酒が弱い宮國さんも、リンゴジュースで乾杯をする。

みんな今日の試合のことを語っている。

内海さんの完全試合のこと。
勇人のホームランのこと。

内海「…でさ、俺もう今日調子良すぎてさ。なんか取りつかれたみたいに」

山口「それ、本当に取りつかれてんじゃないすか？」

内海「ちょい、冗談止めてや」

冗談だけど。本当に今日の内海さんは取りつかれてるみたいだった。

ナイスピッチング

トーマスが憧れるって言うの、分かるピッチングだった。

これは写真送って、お母さんにも認めてもらわなきゃ。