花、そして散る*5

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勇人は2ランホームラン、その後２打席連続ホームランとなった、3ランホームランが決勝点。内海さんは14奪三振の完全試合。


巨人は快勝し、今シーズン白星スタートした。






シーズン開幕ってこともあって、いつもよりドームを後にする時間がいつもより遅い。

これでも、内海さんの完封や、勇人のホームランとか、巨人ナインのみなさんのおかげで予想していたより早まったんだけどね。









仕事を手早く片付け、カメラを鞄にしまう。
佐藤先輩に挨拶をして、部屋を後にする。最近は、仕事もカメラ優先で試合中に終えられる。





ドームを出ると、空は真っ黒だった。









これから、この真っ白なボール。改め、“引換券”をホームランボールと交換しに［花］へ向かう。





今、私の左腕にある腕時計の、短い針は5の代わりであるスミレを指している。そして、長針は2の代わりである向日葵を指している。



勇人が言うには、“引換券”の有効期限は今日の22:30まで。







ちょっとギリギリだけど、間に合うかな？
ゆっくりと進めていた足を、速く進めていく。









電車内には、まだジャイアンツのレプリカを身にまとった人がいる。快勝したからか、お酒が回ってきたからか、熱く語っている。




“坂本も、よく戻ったよな。オープン戦の不調が不思議だよ”

“そういえばさ、カメラマンの姉ちゃんいなくなったよな”

“代わりに若い子入ったってよ”








勇人のことを話してるかと思えば、いきなりカメラマンの話になり、驚いた。




斎藤ちゃん、だっけ？

ファンの人に覚えられるなんて、凄い人だったんだね。私もそんな風になれたらな。私の撮った写真が、ファンの人からも受け入れられたら嬉しい。









電車に揺られながら、今日撮った写真を見る。






勇人と内海さんの写真がほとんどな気がする。
あれだけ活躍してたから、こうなるか。









いろんなことを頭の中で考えてたら、あっという間に［花］、改め私の住まいに着いていた。




駐車場には車が数台、外から見ると中が明るい。そして、騒がしい。

巨人軍が来ている証拠。






ちょこちょこ聞こえる、耳に残る関西弁は、勇人がそこに居る証拠。



きっと、カウンターにね。









「ただいまー」




ほら、居た。

１人だけ、個室じゃなくてカウンターに居て、私を迎えてくれる。






『おかえり、A』

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