三章【堕天】 ページ23
キヨはあれから心療内科への通院を勝手にやめていた。安定剤も飲まず、また常備薬も何にも手を付けることはせず、毎日を前とは嘘のように順風満帆に暮らしていた。
薬が無くともAとの思い出を思い返せば
腕を切らずともAが触れた家具を撫でれば
嘔吐せずともAへの愛を吐露すれば
何も怖くは無かった。
事実ここ数日キヨの体調はこの上ないほどによかった。他の実況仲間から遠回しに心配されるほどだった。
ヘドロを飲み、地を這い蹲る様などん底の鬱状態からこれ程にまで回復する事はまず無い。おかしな話だが病的である。
それもこれも全て、常軌を逸したAへの歪み果てた愛の賜物だった。
鬱状態から異常な速さで起死回生を迎えた精神状態は通常であればパニックを起こしてもおかしくはなかったがキヨにはそれが無かった。
ただひとつ、キヨは浮かれていたせいかAへの監視を怠っていた。
それが全てを狂わせる幕開けとなる。
その日もいつも通り体調が良く、いつもなら宅配で頼むカレーを店舗まで足を運ぶ程に調子が良かった。
日光もあれ程暑く妬ましいものだったし、すれ違う人々を見る度に呪っていた日々が今は心が快晴になったほどに心地がいい。
全て彼女が傍にいてくれたおかげだ。
一体何日あの思い出を引きずるのかと他人から指さされそうだが、全く後ろめたさはない。寧ろこの愛に誇りさえ持っている。
キヨはマスクの下で幸せに頬を綻ばせていた。交際してもいないのに頭の中ではもう同棲しているビジョンが思い浮かんでいた。
きっと彼女と過ごしていたら毎日が天国だ。
たった一日看病して貰ってここまで劇的な精神の回復が見られたのだ。
過ごしていく日々で俺の中の穢れたクソみたいな汚い部分を浄化する様に………
「…ぇ」
向かいの歩道。視界に入った彼女をキヨは見逃さなかった。
その隣でAと楽しそうに笑うあの男も、キヨはしっかりと見ていた。
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なみの。 - 壊れちゃった主人公ちゃんのふわふわした喋り方好きです・・・！とっても面白かったです。 (10月17日 23時) (
レス) @page48 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
霜はっぱ - 完結おめでとうございます!衝撃の最後!!びっくりしまった。流石です(^^)こういうのいっぱい欲しいです!でもあなたの作品はあなたが操るべきなのでご自身の思うがままに書いてくださいね!ほんとにお疲れ様でした!! (2020年9月23日 23時) (レス) id: 03879a5800 (このIDを非表示/違反報告)
草の管理人 - 終わってしまったあああ!!!だがおめでとうございます!!言うのが遅れて申し訳無いです。想像の遥か上を行く最後で口が開いてしまいましたwほんとにお疲れ様でした!わがままですがこれからも病んでる作品いっぱい欲しいです…w (2020年9月23日 23時) (レス) id: 03879a5800 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - るなさん» え〜！？いつもありがとうございます！本当に書いているだけでこちらも体力を削がれるものだったので魂を削って書いた甲斐がありました。そのお言葉大切にします！私もこの作品とてもお気に入りなので愛してやって下さい！最後までありがとうございました！ (2020年9月22日 2時) (レス) id: ade8825d25 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 千景さん» 心に刺さるなんてそんな！もったいないお言葉ありがとうございます！重苦しすぎるヤンデレはこれからも書くと思うのでその時はまたよろしくお願いします！ありがとうございました！！ (2020年9月22日 2時) (レス) id: ade8825d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蠍
| 作成日時：2020年6月1日 0時
