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さっと血の気が引いた。
もし中を見られたのなら、一面の盗撮写真を彼女が発見してしまったら。そんなのでは今までの努力が全て水の泡になる。
待ってと声を張り上げようとしても喉が軋んで上手く声にならない。
一歩をやっと踏み出した時に、その足音に気づいたAがキヨの方を見て驚いてから口を開いた。
『あ、すみませんキヨさん！おトイレってこちらでしたっけ？』
「……え、…と…、あ、ああ…御手洗か」
破裂しそうな程に激しい鼓動を繰り返していた心臓が安心を実感したかのように、動きが鈍くなる感覚を確かに味わった。
どうやら彼女は寝室に入ろうとした訳ではなく、トイレと間違えて開けかけたらしかった。
キヨが奥の扉を指差して教えるとAは慌てたように謝罪を言い残して足早に戸の向こうへと姿を消した。
余程切羽詰まっていたのか、例えそこが入っては行けない部屋だったとしても開けるという行動を優先したのだろう。
何はともあれ見られなくてよかった。
ふと、もし部屋に入られていたらと考える。
身に覚えもない盗撮写真が張り巡らされた一室を見て彼女は何を思い、どんな表情をするのだろうか。
恐怖に脅えて化け物でも見るかのような目を向けるのか、気色の悪さに吐き気を催して自分で埋め尽くされた部屋で嘔吐をするのか。
そんな事を妄想しては消えを繰り返していると気付かぬうちに口角がつり上がっていた。
そんな君も可愛くて興奮するなんて言ったら、今度はどんな顔を見せてくれるのだろうか。
「誰かと電話してたでしょ」
『あ、すみません。起こしたの私の話し声のせいでしたか？』
「そんなことないよ」
そう言ってキヨが微笑むとAは安心したように胸をなで下ろしていた。
俺に迷惑をかけなかったことが嬉しいらしかった。なんて謙虚な子か。
トイレから帰ってきたAと話し、キヨは腕の傷は見られていない事を確信するとつかえが取れたかのように、苦しさは消え失せた。
彼女の前では常に完璧を保っていなければ。体調管理は、まあ別として。
『元気になってよかったです。そろそろ私も帰りますね』
「…………そっか！…また、いつでも来てね」
その言葉にAは確かに『はい』と答えた。
また家に来たがってくれている、俺のことを好いていてくれている。
そう考えるだけでキヨはゾクゾクとした多幸感に包まれていた。
それはAの言葉一つを過大に捉えたに過ぎないというのに。
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なみの。 - 壊れちゃった主人公ちゃんのふわふわした喋り方好きです・・・！とっても面白かったです。 (10月17日 23時) (
レス) @page48 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
霜はっぱ - 完結おめでとうございます!衝撃の最後!!びっくりしまった。流石です(^^)こういうのいっぱい欲しいです!でもあなたの作品はあなたが操るべきなのでご自身の思うがままに書いてくださいね!ほんとにお疲れ様でした!! (2020年9月23日 23時) (レス) id: 03879a5800 (このIDを非表示/違反報告)
草の管理人 - 終わってしまったあああ!!!だがおめでとうございます!!言うのが遅れて申し訳無いです。想像の遥か上を行く最後で口が開いてしまいましたwほんとにお疲れ様でした!わがままですがこれからも病んでる作品いっぱい欲しいです…w (2020年9月23日 23時) (レス) id: 03879a5800 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - るなさん» え〜！？いつもありがとうございます！本当に書いているだけでこちらも体力を削がれるものだったので魂を削って書いた甲斐がありました。そのお言葉大切にします！私もこの作品とてもお気に入りなので愛してやって下さい！最後までありがとうございました！ (2020年9月22日 2時) (レス) id: ade8825d25 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 千景さん» 心に刺さるなんてそんな！もったいないお言葉ありがとうございます！重苦しすぎるヤンデレはこれからも書くと思うのでその時はまたよろしくお願いします！ありがとうございました！！ (2020年9月22日 2時) (レス) id: ade8825d25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蠍
| 作成日時：2020年6月1日 0時
