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髪の毛の先から冷めきった湯の粒がポタリと落ちてフローリングを濡らす。
半ば乱暴にタオルで髪を乾かすキヨはまだ上半身には何も身につけておらず、腹部辺りの無数に広がる痛々しい痣はしっかりと鏡に映っている。それに対してさほど気にした様子も見せず彼は渡されたTシャツを着ると脱衣場の戸へと手を掛けた。
『…服のサイズを間違えて正解だったかな』
「まあ、この服はお前の背丈じゃ合わないだろうな」
リビングのソファに腰をかけていたAは自虐の言葉を口にしたくせにおかしそうに肩を震わせて笑った。
どうやら女の家に置いてあるはずのないサイズのこの服は彼女がネット通販でサイズを間違えて注文した物らしい。よくこの日の為に都合よく置いてあったものだ。
呆れ顔のキヨの顔を漸く落ち着いたAが一瞥すると「お腹空いたでしょ、食べなよ」と端的に呟き、テーブルに置かれたコンビニのビニール袋を指す。中にはパンやおにぎり、個人的にキヨの好きなお茶や惣菜物まで入っていて、どこまで親切丁寧なのかと逆に怪しむ冷静な自分が居る。
それでも腹は空いているし、ここまで来て今更飯は怪しいからいらないなんて言うのもアホらしくて礼を言いながら彼は床に胡座をかいてパンの封を切った。
『首』
「…は？」
最初は意味が分からなくて鳩が豆鉄砲食らったかのような反応をして彼女の顔を見上げた。ソファーに座る彼女は表情を曇らせていてその視線はやはり言っていたようにキヨの首をじとりと見つめていた。
そこでやっとキヨは何を指してAが怪訝そうな顔をするのか理解が出来た。
首に酷い内出血と痣があったことをキヨはすっかり忘れていたのだった。
『さっきは暗くてよく見えなかったけどこう見ると…酷いね』
「あぁ…もう慣れたよ」
そう言ってへらりと笑ったキヨにAは更に痛ましそうな目を向けるも彼の視線はもうパンの方へと移っていて何も言い出すことが出来なかった。
久しぶりのご飯にありつけたと言わんばかりの食いっぷりに彼女が驚いているのも束の間。コンビニではあまり見たことのないくらいの大きさのビニール袋に入っていた食料は全てキヨの口に吸い込まれてしまった。
満足そうに腹部を撫でるキヨを見てAはふと自分の過去を重ねていた。
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color(プロフ) - 合っていまして… ！！徹頭徹尾好きで溢れてて同じ小説を書くもの、参考にもなりました…作者様のファンになりました笑 久しぶりのドキドキをありがとうございました、、！長文失礼しました。 (2022年6月12日 1時) (
レス) id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
color(プロフ) - 先程見つけて全部読ませて頂いたのですが……！言葉選びや表現の仕方等がとても素敵で…感動しました、どの話も好きです…特に「後悔愛に立たず」が一番好きです…思わず背筋がゾクッ、としましたし、彼の彼女に対する愛情や最後の終わり方が物凄く私の趣味に (2022年6月12日 1時) (レス) @page49 id: 6967548606 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - もふたにえんさん» ありがとうございます！！言葉選びにはけっこつ気を付けています笑なのでそこに触れて頂きとても嬉しく思います！！本当にのろまな更新ですが引き続きよろしくお願いします。 (2019年9月16日 3時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
もふたにえん(プロフ) - 新しい話更新されていて急いで読みました！蠍さんの作品は全て綺麗な言葉で書かれておりどれも飽きません。完全に蠍さんのファンです笑これからもゆっくり更新待ってます！ (2019年9月16日 3時) (レス) id: a8f8fce798 (このIDを非表示/違反報告)
蠍(プロフ) - 佳奈さん» ありがとうございます！とっっっても励みになります！！ (2019年9月16日 1時) (レス) id: 19b4bd13c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蠍
| 作成日時：2019年6月27日 12時
