【天月】ねぇ、キスしてよ【歌い手】 (ページ28)

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kiss２７ページ28

そっと唇同士を離すまふくんに
言葉なんか出るわけがない

頭は混乱して、

何故か、苦しい

A「っ、まふ、く・・・・」

まふ「・・・・Aさんって意外とウブなんですね」

A「そんな、ことっ・・・」

否定しようとすると、ひんやりと冷たい、まふくんの手が頬に

あまりの冷たさにまた、目を閉じた

まふ「ふふっ、真っ赤ですよ？」

A「あっ、私、帰りますっ！！」

私は鞄を持って駆け出す

わけがわからない、

みんなみんな可笑しい
天月さんもまふくんも、平凡な私に

じわりと出てくる涙
けして、まふくんのキスが嫌だったわけではない

混乱して、涙腺まで可笑しくなってしまっているだけだ

A「っ・・・はぁ・・・」

走りすぎて、チリチリと痛む肺は酸素を求めている
足はガクガクと力が入らず、
その場所に倒れ込んでしまいそうで

夜影さん？、
嗚呼、今日は何回人に名前を呼ばれるのだろうか

「夜影さん？え、と、大丈夫？」

A「天月、さんっ」

天月「そんなに走ってどうかしたの？」

一番会いたくない人に出会ってしまった・・・――――

そう思う私はやっぱり最低なのか
気づけば口から溢れる、言葉

A「まふくんに、き、キスされって・・・」

天月「・・・・は？」

A「好きって、言われ、て、・・・・」

どうしたらいいのか

その場にしゃがみこんで、私は思考を巡らせる
気持ちの整理がつかない

天月「混乱、してるんだね？」

A「っ、はい・・・・」

聞こえるのは天月さんの声

そこに優しさはあるのか、ないの、か―――

天月「今、まふ・・・楓蘭のことでいっぱい？」

A「はいっ、どうしたら、いいのかっ」

そう言うと天月さんはそっか、と言った

そしてすぐあとに、

「ごめんね」