。 ページ47
「なぁ、A」
速「なんですか」
「俺達って、付き合ってるよな？」
タンッ、と鳴り続けていたタイピングの音が途端に止まる。やっと俺の方を見てくれた目は、「なにを今更」とでも言いたげに細められていた。
付き合っている。少なくとも、お互いにそう思っている。なら、少しくらい踏み込んでも良いのだろうか。
「…殴りたかったら、殴って良いから」
Aの膝の上に置かれていたパソコンを机に移動させ、そのまま彼女の肩を押す。
過去に柔道を嗜んでいたこいつは、本気で嫌ならきっと俺を投げ飛ばすだろう。
だが、今回彼女の体はいとも簡単にソファーに沈み込んだ。つまり、少なくとも嫌ではない、ということだ。
速「殴りませんよ。仮にも好きな人なので」
「っ…ほんと、そういうとこだからな」
今まで意識はしてきたが、絶対に触れることのなかった唇。そこに、恐る恐る自分の唇を当てる。
ふに、という今まで感じたことのない感触に思わずすぐ顔を離す。
あぁ、情けない。今までまともに恋愛をしてこなかった事が、こんな形で仇になるとは。
インタビューで恋愛は2と答えたが、これじゃあ実際はもしかしたら1もないのかもしれない。
速「こういう感じなんだ」
「そう、らしい」
そして今まで彼氏ができたという話が一切入ってこなかったこいつもまた、俺と同じくらいの恋愛偏差値だろう。
…まぁ、でも、
「…あの、さ…そろそろ、名前で呼んでくんない？」
速「…それはちょっと、無理な相談ですね…」
いつもは余裕な表情しか見せないAのこんな表情が見れるなら、今はまだこれで良いのかもしれない。
［結果：友人の期間が長すぎてなかなか進展しない］
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 518人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
