【Q|K】速杉さんは早すぎる【Another story #2】 (ページ36)

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自分のデスクに戻っていく背中を見送って、一応「大丈夫かぁ」という生存確認をしておく。「手遅れ」とガラガラ声ではあったが返ってきたのでまぁ大丈夫なのだろう。
首にかかる荒い息遣い。ヒューヒューと喉が鳴っているところを見ると、軽く喘息気味かもしれない。
前にもうほとんど記憶に残っていないが実は軽い喘息を持ってる、とかなんとか言っていたような、言ってなかったような。

「Aって喘息持ってたっけ？」

速「こほッ、っ…もってる、けど、ｺﾞﾎｯ…かるい…」

「薬は？家？」

速「…さいきん、出てなかったから…貰ってない…」

「いや貰っとけよっ！」

喘息を持っていない俺では軽いとか重いとかの基準が定かではないが、こういう事もあり得るのだから、そういう時に役に立つ何かしらの薬は貰っておくことに越したことはないだろう。
確か…と念のためどこかで見聞きして知っていた喘息かどうか見分ける方法を実践する。あーうん、間違いなく喘息ですね、はい。

…ほんとに、何故こいつはこっちが気づくまで絶対に自分から言おうとしないんだ。いや理由はなんとなく分かってるけど、なにがそこまでさせるんだ本当に。

Aの後頭部を撫でながら溜め息を吐く。疲れたわけではないが、どうしても出したくなった。

速「…ごめん…」

「…なにが」

速「…ｺﾞﾎｯ、ｹﾞﾎｯ…めんどーで、ﾋｭ…ごめん…ｺﾎｯ…」

「あーあー泣くなって、言い過ぎた、悪かった」

流石に腕が疲れたのかAは抱きついていた腕の力を緩めると再びソファーに仰向けで寝転んだ。その時、僅かに目尻が濡れていたのが視界に入ったので雑ではあるが袖で涙を拭う。
情緒不安定だなほんとに…と思うが、前に俺を看病しに来てくれた時のAの心情もそうだったのかと考えると、俺が言えた立場じゃないな、とその考えは捨てる。病人ってそういうもん、そう考えよう。

目元を腕で覆ったAになんか欲しいものあるか、と聞くとこうちゃんと返ってきたので却下と返す。こいつはこうちゃんの事を抱き枕かなにかと勘違いしているのだろうか。確かに体温は高いが。

「じゃあ今なにが一番きつい？」

速「…いき、しにくい…こと…」

「…ちょっと一旦体起こすぞ」

これも確か…程度の知識だが、喘息の時は寝ているときの方が逆に辛いと誰かが言っていた気がする。