009 とある隊士の因縁 ページ9
__フーと荒い息をしながら、俺は目の前の男を睨む。
黒髪に、目元を隠す包帯。
間違いない。
この人は、あの時…鱗滝さんに出会う少し前に遭遇した隊士だ。
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「__鬼か?」
そんな呟きが聞こえるまで存在に気付かないほど、音もなく眼前に現れた男に警戒しないはずがない。瞬時に間を取り禰豆子を背負った籠を守るように抱え、その人を見た。
冨岡さんよりも短い黒髪。そして何より目元の包帯に目がいく。普通に考えてそこに巻いてあると見えないだろう。だが彼はきっと見えているのだろう。
獲物を狩る動物の警戒心、のような匂いがするのだ。
だからこそ、感じた。
ここで目の前の男を止めなければきっと禰豆子は殺されてしまう。
「っ妹は!禰豆子は!!人を食わない!」
精一杯の気持ちを込め、説得しようと試みたが彼は気にも止めずに腰の刀を抜き籠へと向けた。
「虫がいいな」
包帯の男は吐き捨てるように言い、俺の方を見ている…ように思える。
「…それはかつての家族さえも喰らう」
「そんなモノを野放しにしておくのか」
「周りの犠牲を考えろ」
ゆっくりと間合いを詰めてくる彼から離れながらどうすべきか考えていたが、酷く頭が混乱していて考えが上手く纏まらない。
そして遂に俺の背後にはもう下がる余裕がなくなった。
「命乞いは終わったな」
ニヤリと嗤うこの男をどうしたら止められるのだ。
そう考えていたのだが、何故かは分からないが考えるよりも先に口が動いて言葉を発していた。
「__冨岡さん」
ピクリと彼の刀が揺れた。そしてハア、と溜息を吐いて彼は何故か刀を鞘に戻し踵を返した。
訳もわからず立ち尽くしていると、彼はクルリと振り返り、口を開く。
「__今は見逃す。だが、次はない。
次会う時はその鬼は殺す」
そして黒髪の男は瞬きする間に姿を消していた。
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その男が今、目の前にいる。__否、居るはずなのだが、どうもおかしい。
……彼から困惑と諦めの匂いがする。
この匂いは、街で濡れ衣を掛けられた人からよくしていた。つまり、これは濡れ衣か。だとしたら何のために…。
「………重い」
そう呟く目の前の彼_東門Aさんは以前よりも柔らかく穏やかな匂いを纏っていた。
慌てて避け、彼をじっと見やる。
__貴方は、誰だ?
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琴律(プロフ) - とても面白かったです!イメログの方も見させて頂きました!とっても上手ですね!!無理しない程度に更新頑張って下さい! (2020年3月10日 9時) (レス) id: b4e402c9aa (このIDを非表示/違反報告)
25253 - 面白かったです!これからも頑張ってください (2020年3月10日 9時) (レス) id: a847137800 (このIDを非表示/違反報告)
そらるな(プロフ) - 楽しかったです。更新待ってます。 (2020年3月8日 0時) (レス) id: 4a84e506c1 (このIDを非表示/違反報告)
そらるな(プロフ) - 楽しかったです。更新待ってます。 (2020年3月8日 0時) (レス) id: 4a84e506c1 (このIDを非表示/違反報告)
佐峅@岩動(プロフ) - 海谷2128:Δさん» コメント、励ましの言葉ありがとうございます!趣味でもありますのでちまちま更新して参りますので、気長にお待ち下さい!これからも頑張ります! (2020年2月26日 19時) (レス) id: 1d5638e044 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐峅@岩動 | 作成日時:2020年2月25日 20時