001 とある隊員の証言 ページ1
____ビュン、と奴らの放つ鉄砲のような血鬼術から俺を庇うように立つ俺の先輩である彼。
彼__東門Aさんは俺が後ろにいるのを気配で察したのか口を開いた。下がれ、と。
「っまってください、東門さん、そんな傷じゃ貴方まで」
「煩い」
そう吐き捨てるように言い俺の制止をひと蹴り。
そして《口元しか見えない》彼が俺の方に顔を一瞬向け、ニィ、と微笑んだ。
「__お前は足手纏いだ」
「俺なら上手く戦える」
「だから、行けと言っている」
こんなことを言われて絶望しない隊員なんているのだろうか。
こんな戦場で、彼は、自分の手柄のために俺に下がれと言う!
この程度の小物なら自分で倒せるからと!!
「っ誰がお前の命令を聞くと思って__」
「__上の言うことが聞けないのか?」
そう悪意を込めた圧力に俺は耐えられなかった。
ギュと、自分の日輪刀を握り、彼の横をすり抜け鬼へと斬りかかる。
俺の日輪刀はもう振りかざした。鬼の首まであと僅か。ざまあみろ。いつまでもお前の言うことを聞いていると思ったら大間違い__
「______ぁっ?」
何故か身体が燃えるように熱い。おかしいな、ちょっと気分が高揚しすぎたのか?まあ、たしかに気分は良い。ちょっとばかし喜びすぎたんだろう。
だが、何故
喉の奥から熱いものがこみ上げ空気と一緒に吐き出すと辺りを赤く染め上げた。嗚呼、血だ。理解したと同時に身体の力が抜け地面に倒れ伏した。
「……だから言ったろう。
『お前は足手纏いだ』と」
憂うような声が聞こえる。暗くなる視界に入る黒い髪。東門さんだ。彼は俺の頭を撫でているようだった。
「…キシッ、テメェは気付いてやがったか。俺の血鬼術が《幻覚を生み出す》ものだと!!」
その背後から東門さんへ飛びかかる鬼。
__危ない、と声を出そうにもパクパクと魚のように口を開け閉めするしかできない俺。
「背中がガラ空きだぜ?鬼殺の剣士さんよ」
「っ!!」
__待ってくれ。
このままでは彼が。俺の先輩が、殺されてしまう。
だが、俺にもう動く力が残されておらず、鬼は東門さんの首を掴むとそのまま森の奥深くへと走り去ってしまった__
__________________________
「…以上が俺の覚えている東門さんの最期です」
そう目の前にいる柱に恐る恐る伝えると、そうですか、と一言。
「__私達も惜しい人を亡くしましたね」
…紫の瞳がわずかに揺れた。
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琴律(プロフ) - とても面白かったです!イメログの方も見させて頂きました!とっても上手ですね!!無理しない程度に更新頑張って下さい! (2020年3月10日 9時) (レス) id: b4e402c9aa (このIDを非表示/違反報告)
25253 - 面白かったです!これからも頑張ってください (2020年3月10日 9時) (レス) id: a847137800 (このIDを非表示/違反報告)
そらるな(プロフ) - 楽しかったです。更新待ってます。 (2020年3月8日 0時) (レス) id: 4a84e506c1 (このIDを非表示/違反報告)
そらるな(プロフ) - 楽しかったです。更新待ってます。 (2020年3月8日 0時) (レス) id: 4a84e506c1 (このIDを非表示/違反報告)
佐峅@岩動(プロフ) - 海谷2128:Δさん» コメント、励ましの言葉ありがとうございます!趣味でもありますのでちまちま更新して参りますので、気長にお待ち下さい!これからも頑張ります! (2020年2月26日 19時) (レス) id: 1d5638e044 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐峅@岩動 | 作成日時:2020年2月25日 20時