thirty_three ページ33
「あ……」
目にした光景は私には余りにも酷すぎた。
身体中の力が抜けて
地面にへたり込んだ。
「……ぁ、あ」
ごうごうと燃え盛る屋敷だったモノ。
そしてそこから慌てて出てくる黒い人影。
あれがきっと、政府の役人なんだろう。
__彼らさえ、いなければ?
__彼らが余計なことをしなければ?
「っあ……あぁ」
彼処にはまだ持ってこれなかった、
主人との思い出の品がたくさん残っていた。
写真に、服に、食器だって。
それが勝手に入り込んだ無粋な輩によって
跡形もなく消し去られている。
「__ぁあぁぁあぁぁぁあああ!!!」
私は叫んだ。
喉が痛むくらいに。心が壊れないように。
何故、何故!!!!
私から何もかもを奪おうとする!?
主人を、仕事を、自由を奪った挙句に
安寧の場をも、奪っていった。
「あああぁあぁぁぁあぁぁ!!!!」
ポタポタと、瞳から水がこぼれていく。
嫌だ、嫌だ。
__なくなっちゃ、いやだ。
その思いに突き動かされ、おもむろに懐を漁る。
出てきたのは、懐中時計と、ペーパーナイフ。
__もう、此れくらいしか残ってない。
審神者として、だなんて
はなからやるつもりなど無かったのに
彼奴らさえ来なければ、
屋敷は無くならなかったのではないか。
ふらり、と宛ら亡霊のように立ち上がり
覚束ない足取りで屋敷の近くへと歩みだす。
__屋敷が目と鼻の先になると、
政府の役人が私に視線を向けてきた。
「……誰だあんた。
ここは一般人立ち入り禁止だ」
まあもう燃えちまったけどな、と
ケラケラと笑う其奴。
「……一つ訂正させていただきますと」
私はにこりと微笑み、その役人に囁く。
「私はここに勤めておりました
使用人のAと申します」
返事はなかった。
彼は首元から血を吹き出していたから。
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孤縷 - えっと…今後、更新の予定はおありでしょうか。お待ちしています。終わらないで…! (2018年3月19日 15時) (レス) id: 6e76e80232 (このIDを非表示/違反報告)
あい - よーし、政府ちょっとあんたの家教えて?同じ目に遭わせてやるから(*⌒▽⌒*) (2017年6月2日 23時) (レス) id: 332d0053d7 (このIDを非表示/違反報告)
佐峅@暹羅(プロフ) - LOVE&Animeさん» 在り来たりな小説だときっと皆様の目には止まらないと思ったのでちょっと斜め上を行ってみました!これからもっと複雑にしていけたらなぁと思っております!!コメントありがとうございます!!励みになります! (2017年2月17日 10時) (レス) id: 69415a49e7 (このIDを非表示/違反報告)
佐峅@暹羅(プロフ) - 浅葱さん» 返信遅くてすみませんっ!!更新頑張っていきます!主人命って感じの夢主ですからねぇ……うふふ← (2017年2月17日 10時) (レス) id: 69415a49e7 (このIDを非表示/違反報告)
LOVE&Anime(プロフ) - 刀剣乱舞の小説を見てきて、執事という夢主は初めてで、とても面白いです! 主人をなくし、そして屋敷までもが… これからどうなるのか楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年2月17日 2時) (レス) id: 55de396f05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐峅 | 作成日時:2016年7月28日 14時