【Free!】林檎【山崎宗介】Part3

第84話 ページ4

ー真琴の部屋ー

「ごめんね、疲れたでしょ」

カタン

そう言いながら紅茶を置いてくれた

「そんな事ないですよ。楽しかったです」

まだ熱い紅茶を冷まして、少し口に流し込む

ごっこ遊びなんていつ以来だったかなぁ

「やっと一息つけるね」

カチャ

そう言う真琴先輩は、メガネをかけていた

ノートとかを机に置いて、私の向かいに座る

なんか、いつも通り？

この間七菜香とあんな事があったのにあまり気にしてないのかな

「どうしたの……A？」

上目遣いで、真琴先輩は言う

顔に出てたかな

「何でもないですよ」

ヘラッと笑って誤魔化した

こんな重い話するわけ…

「やっぱり、気にしてる？」

…真琴先輩から持ちかけてきちゃった……←

「気にして……ない、ですよ」

咄嗟の返事に、自分でも話し方が怪しいと思ってしまう

「ごめんね、俺が不甲斐なかった」

「…真琴先輩が謝る事じゃ……」

「油断したんだ、七菜香…俺と中学が一緒で…よく話してたから」

よく話してた、そんな言葉に反応してしまう

…だから呼び捨てだったりしてるんだ

「俺、A以外の人とキスとかした事無いから……」

「え！？」

ほんとに！？

真琴先輩、モテるから絶対慣れてると思ってたのに…

「そんなびっくりする事かな？」

「はい…」

別れようって、言う？

「あの…真琴先輩」

「何？」

無邪気な顔で尋ねる真琴先輩

その顔を見ると、罪悪感が増す

「私たち、もうすぐ離れますよね」

「…そうだね」

「それで……その…私たち、別れ、ませんか？」

俯いた後、真正面から真琴先輩を見る

「……え？…本当に言ってる？」

「はい……もう、続けるのは無理だと思ったんです」

「そっか……」

ギュッ

太ももの上に置かれた手が、どんどん力強くなっていく

自分の手なのに、自分の手じゃないみたい

「俺さ……ちゃんと恋人、できてた？」

いつもと変わらない様子で真琴先輩は言った

…いや、いつもと変わらない様子を演じてる

動揺、してるのかな

いつもは自然に出来る逆三角形の口が、引きつってる

「私こそ…」

やっぱり、真琴先輩は自分を責める

私を責め立てようとはしなかった

「っ、あの…また会った時は……話しかけて良い、ですか？」

別れたけど…縁まで切りたくない

友だちとして、これから接して行けば良いと思ってる

……そんな自分勝手は、駄目かな

「………今日何の日か知ってる？」

突然持ちかけられた、そんな質問

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