第100話 ページ20
ーAsideー
「兄さん、もうすぐだね」
今日は兄さんが東京へ行く日
私が中三になる春にも、この空港のこの場所でこう言った
兄さんの二度目の旅立ちの日
この一ヶ月間、泣き腫らした日が多かった
だから、もう涙は出ないよね
笑顔で見送りたいの
「おう。……元気でな」
兄さんの目は優しくて
「一年後は私も行くんだよ、東京」
「……ああ、待ってる」
見送るのは私だけ
兄さんが母さんたちにも来ないで良いって言ったから
「これで、最後じゃないよね」
「…ったり前だろ」
ギュ…ッ
そう言って兄さんは私を抱き締める
良かった、誰もいなくて
だって普通の恋人たちなら、するよね
でも、こんな事したら…
「毎日会いたいのに…」
涙が溢れてくる
「馬鹿、泣くな」
優しい顔で私の頭を撫でる
そんな事、しないでよ
余計に切なくなっちゃう
「お前が東京に来たら、一緒に住もう。部屋は狭えかもしれないけど、家賃は払うから」
一年先…
私にとってはすっごく遠い話なの
これから三百六十五日間、兄さんに会えないんだ
それだけで胸が締め付けられる
「好きだよ……好き」
たった数十日前まで言えなかった言葉
それが今、こんなに素直に出てくる
「ああ、俺もだ。俺も……ずっと愛してる」
私はその言葉を期待して、好きって言ったのかもしれない
……けど、良いよね?
誰かの一番になれて、私は毎日が幸せだと思う
「…もう、行かないと」
私の頬を撫でて兄さんは言う
分かってる、そんなの
分かってるのに……離れたくないの
我儘だよ、兄さんが困っちゃう
「……じゃあな。盆と正月くらいは帰ってくる」
「うん」
せめて最後くらいは、笑顔で…
笑顔で見送らなきゃ……いけないのに…!
「兄さん…っ!」
兄さんの腕を引き寄せて、少し背伸びをして唇に触れる
涙が止まらないの、どうしてかな
「たまには、電話もしてね…我儘言うけど、許して…」
どうでもいい話で兄さんを困らせてしまう
もう行かなきゃなのに
「ああ、電話もする…全部聞いてやる」
「絶対…絶対だよ?」
「ああ……………本当は、俺だって離れたくない」
初めて兄さんの本心を聞いた気がして、嬉しかった
……絶対兄さんに似合うような人になるから
その時まで……待ってて
➖END➖
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初音ツバキ(プロフ) - 永遠の高校生さん» ええ!?大丈夫ですか??(;゜0゜)お返事が遅くなって申しわけありませんが、コメント本当に感謝です!励みになります!これからもどうぞよろしくお願いします! (2015年11月2日 18時) (レス) id: 5a96c81bd9 (このIDを非表示/違反報告)
永遠の高校生(プロフ) - 泣きすぎて、脱水症状が出るところでした。 (2015年10月28日 23時) (レス) id: c000b33630 (このIDを非表示/違反報告)
ゆぅか - 真琴との別れのところでは、涙が止まりませんでした…。時間が掛かってもいいので次は幸せになってほしいです! (2015年7月30日 11時) (レス) id: 9e29681e3d (このIDを非表示/違反報告)
初音ツバキ(プロフ) - くみさん» ありがとうございます!m(_ _)m最後まで嬉しい言葉の数々…!感謝しきれないくらいです(T . T)これからもどうか宜しくお願いします (2015年5月14日 22時) (レス) id: 5a96c81bd9 (このIDを非表示/違反報告)
くみ - こんばんは(*´▽`*)すごく面白かったです!宗介とずっと幸せでいられますように☆続編&新作すっごく楽しみです! (2015年5月14日 19時) (レス) id: 64d3ef2010 (このIDを非表示/違反報告)
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