【Free!】林檎【山崎宗介】Part2

第76話 ページ36

ーAsideー

あー……このドア開けるの嫌だなぁ

あれから少し経って、やっと涙が引いた頃に凛くんと分かれた

今日はたくさん迷惑かけたよね

今度お礼しないと

ガチャ…

恐る恐る開けてみる

…電気付いてる

とりあえず帰って来てはいるんだ

目、腫れてないよね

……腫れてても分からなきゃいいか

「ふぅ…」

一呼吸置いてリビングの扉を開ける

「…………あれ？」

兄さん寝てる

…安心の気持ちと、がっかりした気持ちが同時にきた

またこんな所で寝ちゃって……

そこら辺に置いてあった毛布を取る

「ん」

カップが置いてある

しかも二つ…

「私の、分？」

私のカップだ

ラップがしてあって、中にはココアが入ってる

兄さんのはコーヒーみたいだけど、飲み終わってた

……そんな時間経ってたっけ

まあ今八時だし……

「…ごめんね、兄さん」

そっと毛布をかけて、リビングから出た

この世界は、私だけじゃ無い

そんな簡単な事を、忘れそうになる一日だった

ー宗介sideー

……ごめんってどういう意味だ

モソッ

布団…かけてくれたんだな

作ったココアは、結局飲まなかったな

チャプチャプ…

カップの中身を流しながら考える

やけに帰りが遅かったな、A

それに江から凛がとこにいるかっていうメールも来たし…

一緒にいたのか？

…はあ

ピピッ

…………メール？

誰からだ、優姫…か？

カチャ

『今日はありがとうございました』

そんな文面をじっと見て、しばらくしてからケータイを閉じる

……あの曲がり角では、結局キスは出来なかった

雰囲気も抜群に良くてAを忘れる為に今日は進展しようと思った

けど、無理だった

直前で、Aの事を思い出した

好きでもない女と、こんな事して良いのかって思った

「どんなダメ男だよ……俺は」

…つーか晩飯、食べてねえな

どっちみち食欲がないから別にいいか…

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