笑顔 ページ4
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「ごめん、知らなくて…」
『…』
彼女は首を横に振る。
大丈夫です、って言う目で俺を見る。
ああ、セリフ間違えたかな。
知らなかった、じゃない。
俺は、もっと知りたいんだ。
「ゆっくりでいいから、もっと聞きたい」
『？』
「もっと知りたい」
俺が笑顔を向けると、彼女も少し控えめに笑った。
そこにはもう、涙は消えていた。
「名前は？」
“1年生です。みゆ、って言います。”
俺と一緒。
みゆ、か。
可愛くて素敵な名前だ。
「…そっか、」
あれ？なんかおかしいな。
なんで…
『…ん、』
「？」
“ あなたの名前は？ ”
「俺も1年。スンリ、」
『…？』
「あー、俺ね、韓国生まれなの」
そう言うとみゆは
大きな目をさらに大きくさせて言った。
『…じ、よ、ず』
「上手？」
『ん、』
あー、やばいな。
真っ直ぐに俺だけを見て笑う顔が直視出来ず
思わず逸らしてしまう視線。
「その…んと…ありがと」
『ん、』
どうしよう、どうしたらいい？
えと、何を話そうか……
「あ!!」
『？』
「入学式、隣に座ろうよ！
席は自由なんだって！」
思わず勢いだけで握ってしまったみゆの綺麗な手。
さっきは出来なかったから、
今度はしっかりと握ったまま、みゆの目の奥を見つめた。
それは
吸い込まれそうなほど純粋で無垢な瞳だった。
『…』
あ、照れてる？
耳が少し、赤くなっている気がする。
…まぁ、気のせいか。
『…ん、』
「やった！
じゃあもうそろそろ時間だし、行こうよ！」
『あ…っ』
校舎の方へ走り出すと、俺を追いかけるようにみゆもぴょこぴょことついて来た。
「待って」って顔が愛おしい。
もうちょっとだけ意地悪しちゃお。
「遅いなぁー、早く！」
『んーーー！！！』
笑いながら怒ってる顔。
精一杯、精一杯、振る両腕。
懸命に走る姿。
頑張る君。
何だろう、この気持ち。
俺はまだ名も知らぬ不思議な感覚に
包まれていた。
続く
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作者名：すん。 | 作成日時：2018年9月6日 23時
