【ツキウタ。】ツキノ寮には、天然バカと訳あり少女が居るようで。2【卯月新】【霜月隼】 (ページ37)

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天然バカ*37話【閲覧注意？】ページ37

新side

俺は膝に手をついて息を整えた。

噂の廊下についたはいいものの、肝心の百合の姿が見当たらない。

「どこ行ったんだあいつ…」

探し回っていると、ドアが開いていた。

覗いてみると、そこは屋上で。

ここのホテルは、一定時間ごとに屋上が開放される。

けど、俺の記憶が正しければ、今日の開放時間は、一時間前に終わっていた。

疑問を抱きつつ、屋上へと出る。

すると、屋上の落ちるか落ちないかのきわどいところに百合が立っていた。

『あっち？』

遠くにいたからはっきりとは聞き取れなかったが、この言葉だけはしっかり聞き取れた。

…ってそんなゆっくりしてる場合じゃない！！

「百合！？何やってるんだお前！？」

全速力で駆け寄り、飛び降りようとした彼女の腕をつかむ。

すると、百合はくるりとこちらを向いた。

「お前、自分のやろうとしてること分かってるのか！？」

彼女を、元いた場所より少し下がった俺の隣に立たせる。

彼女はきょとんとしていた。

『え、…何のことです？この階段上ったらこの子をお母さんの所に…』

「は？…お前、前見てみろ。」

前を向いた彼女は混乱していた。けど、このままここにいるのも危ないので、手前の安全な場所に移動する。

「お前、大丈夫か？このホテルの階段はいつもはドアが閉まってて非常用になってる。階段を上ったところで行きつくのは駐車場だ。…小さいころに親に言われなかったか？”知らない人には絶対ついていくな”って。」

立っていた彼女に正座をさせ、柄にもなく母親みたいに問いただす。

『ハイ、ごもっともです。』

そう言って深々と頭を下げる百合にため息をついて、小さな声でつぶやいた。

「…い…よ…」

そのつぶやきが、ジェットコースターの乗客の悲鳴にかき消されて、彼女の耳には届かなかったらしい。

「なんでもない。戻るぞー。」

それをごまかすかのように、俺はくるりと背を向け、食堂へと足を進める。

後ろからパタパタという足音とともに新さん歩くの早い！！という声が聞こえるので、ちゃんとついてきているのだろう。

そんな安心感で、さっきつぶやいた言葉が気が付けば口からこぼれていた。

「…ったく、心配かけんなよ…」