【ツキウタ。】ツキノ寮には、天然バカと訳あり少女が居るようで。2【卯月新】【霜月隼】 (ページ26)

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訳あり少女*31話【閲覧注意】ページ26

志穂サイド↓

＿＿逃げなきゃ。
大人(それ)を見た時、真っ先に浮かんだ言葉だった。

何もかも分からないまま、ただひたすら、廊下を走っていく。

怖い、怖い、怖い、怖い。
色々な思いが入り交じる中、確かに感じるのは、恐怖心だった。

逃げなきゃ、そうしなきゃ、“おしおき”されてしまう。

無我夢中に廊下を走り抜け、扉を開けると、そこには＿＿＿

?「えっ、志穂!!?」

赤い髪に、茶色の髪に、黒い髪、様々な髪色が見える。

…何、これ。大人の人、ばっか＿＿＿＿＿

私が呆然と立ち尽くしていると、赤い髪の人が私の名前を言ったのを引き金に、わらわらと人が集まってきた。

?2「わぁ、志穂ちゃん！」

?3「お久しぶりです！」

?4「…良かった。もう、元気になったんだね。」

皆、各々の反応を見せる中、共通して言えるのは、何処か安心した表情を浮かべている事だ。

「…ど、して……」

どうして、どうしてこんな…

?4「志穂…?」

貴方達も、私をおしおきする為に＿＿

「…にげなきゃ。」

うわ言の様に呟くと、私はここから逃げる為、また走り出す。

?「え、ちょっ、志穂!!?」

?6「待て！」

?3「くっ、黒月さん!!?」

後ろから、沢山の足音が聞こえる。
どうして、追いかけられてるの？
どうして、私の名前を呼ぶの？
＿＿おしおき、する為なの？

気づいたら、部屋の隅まで来てしまった。
まるで囲む様に来る大人達。

…あぁ、もう、逃げられない。
きっと、このまま“おしおき”されるんだ。

“何か”が、必死に叫んでいるのが聞こえた。ごめんね。何も、聞こえないや。

＿＿＿“何か”が壊れた、音がした。

「っ、あは…あはははっ……」

口から、笑いが零れた。
目から、雫が溢れた。

?2「…志穂ちゃん……？」

「あは、あははははは…っ!!!!!!!!!!」

滲んだ視界の中、私は自身の手首を、伸びた爪で思い切り引っ掻いた。何度も、何度も、何度も…

?6「ちょ…やめろっ!!!」

すかさず、大人(誰か)が私の腕を掴む。
私はその手を思い切り振り払った。

「っあ、あはははは、あはははははっ……!!!!!!!!!」

傷から、少しずつ血が滲む。
まだ、まだだ、まだ足りない、もっともっともっともっと…!!!!!!!!

狂った様に、手首を掻く私の視界に映ったのは、皆の化物を見るかのような(恐怖に染まった)表情だった。

「っあはははは……痛いなぁ…」