雪恋。

９ ページ40

渡せたとしても、
好きなんて言えるわけない。

義理感満載に振舞ってしまう自信大有り。


そんな心の中、見透かされたんか、


「間違っても友チョコとか、
義理チョコとか言うたらあかんで？
しっとりした空気で渡すねんで？」


ヤスくんに念押しされた。

ヤスくんて、宇宙人やないなら、エスパーやな。


「しっとりした空気・・・」


一番苦手分野やわ。





ヤスくんにアドバイスを受けながら、
会社に到着。


こんなに叱咤激励されたら、
もしかして、錦戸も私のこと、
まだちょっとは好きかな、なんて。

自惚れたくもなる。


昨日、めっちゃ謝ってたし、
チョコ欲しいなんて可愛いことも言ってきたし。

許してあげよっと。


告白はさすがにどんだけ振り絞っても、
３０女にはハードル高いねんけど。




オフィスに着いたら、
東京からの偉いさんがお二人、
エレベーターを待ってはった。


一人は、めっちゃ洗練された、背の高い女の人。


うわあ。

ドラマみたい、て、ぼんやりしてたら。


エレベーターが開いて、
錦戸が降りて来た。


「おはようございます。
お待たせしました。
小島部長、高瀬課長」


このお二人を出迎えに来たっぽい。


「錦戸くん、おはよ」


やけに親しげ。


東京におった時の上司やんね？


「昨日は遅くまで付き合わせちゃってごめんね」


「いえ。
知世さんこそ、お疲れやないですか？」


「私は大丈夫。
錦戸、良いお店知ってるんだね。
美味しかったし、オシャレだったし。
ありがとね」


「いえ。気に入ってもらえて良かったです」


錦戸、彼女のこと、名前で呼んだ！

おまけに、お洒落なお店って。


私とは、居酒屋かラーメン屋しか行ったことないのに。


くう。

敗北感。


こんな大人カッコいい女上司と、
仕事してたとは。


もしや、元カノ？


可能性、ありあり。


目の前の二人は、まるで、
ドラマから抜け出してきたみたいやねんもん。

１０→←８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す