雪恋。

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なぜか、コンビニで買ったいう、チョコ持って。


「電車、止まってんで。
今日はここに泊まりや」


あの時の照れくさそうな苦笑い、
今も忘れられへん。


錦戸が手伝ってくれたら、
朝までかかるって思い込んでた仕事は、
すぐに片付いて、

並んで座って、
窓の外に降り続けてる雪を眺めながら、
二人でチョコ食べて・・・


いつもと違って、
錦戸が無口やから、
沈黙に耐えかねて。


「どうしたん？
なんか今日、静か、」


そう言いかけた時、不意打ちにキスされた。


びっくりしたけど、
友達のふりして密かに好きやったから、
ほんまは嬉しくて踊り出したいぐらいやった。



あの日から、
錦戸が本社に異動になった４月前までの、
１ケ月半、

私の中では、
錦戸は彼氏やってんけど・・・

違うんかな？



付き合おうとかは、言われてない。


それははっきり覚えてる。


恋人同士とは、違ったんかもしれへん。


けど・・・


好きや、って、掠れた声で言ってくれた。

ほんの何回かだけやけど・・・


その時の少し苦しそうな、切ない顔。

大好きやった。



気付いたら、コピーは終わってた。

まとめて、錦戸係長のデスクに持って行く。


「ありがとうな。
さっき章ちゃんに社食で会うてさ。
今日、同期で飲み行けへん？誘われてん。
お前も行くやろ？
それから、京ちゃんは、」


「京香は一昨年結婚して、辞めてん。
赤ちゃんおるから急には無理やと思う」


「そっか。
そら、もう俺らも３０やもんなあ。
そんな年やんな」


そう、もう３０。


再会して早速、
望みのない錦戸に気持ち揺さぶられちゃってる暇はないねん。


「ごめん。
私も今日は予定あって・・・」


なんでか、咄嗟に嘘ついてしまって。


言ったそばから後悔して。


「あ、明日なら。空いてる」


慌てて、付け足し。


余計、必死に見えたやん。もう・・・


「分かった。明日な」


なんの用事があるとか、詮索されへんかった。


おばちゃんと化した私になんか、
今更興味ないか・・・

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