雪恋。

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会社帰りに、チョコ売り場に寄る。

麻衣子は、彼に断られた割に、
はしゃいで選んでるわけ。


「実は、給湯室の外で、
二人の会話、聞こえてたの。
重岡、いつまでたっても、
チョコちょうだいって言えないみたいで、
イライラしちゃって。
気付いたら踏み込んでたわけ」


「そうだったの？」


「うん。
重岡も絶対にAのこと、
気になってるよ。
最近、仲良いいし、
良い雰囲気だもん」


「そうかなあ。
いっつもふざけてるだけだよ？」


「あの重岡だよ？
好きな子にはちょっかいかけたいんだって」


麻衣子の楽観的意見はどうなんだろう。


私も時々、感じてたよ。


重岡、同期の中でも、私には気を許してくれてるなあ、って。


でも、純粋に、友達として、って可能性、
否定出来ないのが悲しいとこ。


だって、相手はあの小学生男子のような重岡だもん。


重岡が誰かと恋愛するっていうのが、
まずもう、
想像出来ない。


いつも、ふざけてる。


好き、って、どんな顔して言うんだろう。

どんな声で。


どんな風にキスするの？


そこまで妄想して、
ハッとした。


私ってば、夕方の混み合ったデパートで何という淫らな。


「A、チョコ、それにするの？
綺麗だね。
私はこれにしよっと」


麻衣子の言葉に、慌てて、うなづく。


「中間さん、バレンタインも仕事なんでしょ？」


「うん。もう淳太なんか知らない。
仕事仕事って、
私のことなんかほったらかしだもん。
・・・でも一応、チョコくらいは、
渡すの、当日じゃなくてもいいし」


麻衣子の彼氏は、
みんなには内緒だけど、
実は、同じ会社の上司、
中間課長だ。


３１歳の最年少課長の中間さんは、
真面目で素敵な人で、
全女子社員の憧れだけど、

彼女の麻衣子曰く、
女心に疎くて、真面目過ぎて、
つまんないらしい。


つまんない、っていうのは、
本音は、寂しい、不安、の、強がりだって、
私には分かってる。

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