雪恋。

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当の本人はそんなこと全然知らずに、
いい気なもん。


「いつなったら、
お前にも彼氏出来んのやろな」


美味しそうにコーラ飲んでる姿は、
悔しいけど、文句のつけようない位に、
かっこいい。


なんか、憎ったらしくなってきた。


「あのさ、A、明日・・・」


「錦戸は覚えてないみたいやけど」


声が重なった。


「ん？なんを？」


先に聞き返されてしまって。

言わざるを得ない雰囲気に。


どうしよう。

ぶちまけちゃっていいんかな。


そしたら、仕事やりにくくなってしまうかな。


「・・・私の彼氏やったこと。
やから、そんな無神経にからかったり出来るんやんな」


「・・・」


予想外過ぎたんか、
錦戸、固まってしまった。


その表情見てたら、
不安になってきた。


「いい。
私の勘違いやった」


恥ずかしくなって、立ち上がる。

ここにもうおられへん。


歩き出した私の腕を、錦戸が掴む。


「A、ちょ、待てって」


「離して。
セクハラ大王。
無神経男」


「落ち着けって。
記憶障害ちゃうねんから、
覚えてるに決まってるやんけ」


「じゃあ、なんでそんな、意地悪ばっか言うん？」


あかん。

泣けてきた。


腕を振りほどいて駆け出す。


焦って追いかけて来た錦戸を、


「錦戸くん！ちょっと！」


部長が呼び止めたのいいことに、
エレベーターに飛び乗る。


壁にもたれたら、
涙がこぼれた。


大人の女にはあるまじき行い。

私、最低や・・・


こんな時に話を聞いてくれた京香ももう、
今となっては忙しいママで、
電話するのもためらわれる。


大阪にはこんなに人がおるのに、
ひとりぼっちやなあって。

歩きながら、ずっとそんなこと考えてた。

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